「そうだ、猫カフェに行こう!」
思いついたまま口にすると、ソファで寛いでいた光が顔を上げた。
「なんや急に」
「今から行こうよ、寝てまいそう」
「寝とけや」
「豚になっちゃう」
それを言うなら牛やろ、やる気のないツッコミが入った。お昼ご飯食べて、良い天気で、寝るなって言う方が難しい。でもせっかくの休日食っちゃ寝で終わらせるのはもったいない。行こうよともう一度声をかけるが、寒いやんと嫌そうな顔をした。なのでおばちゃんに光のコートとカイロを持ってきてもらった。
「ほら、これであったかい」
「おかんのやつ……隠しとったのに」
母はなんでもお見通しやんなーとおばちゃんに声をかけると、うるさいからさっさと出かけてこいと言われてしまった。それに対してうるさいのはなまえだけやと文句を言っていたがコートを着て外へ出た。
「うひいいい寒いいいいい」
「言うたやん、寒いって」
「はよ猫もっふもふしてぬっくぬくしよ」
「俺は見てるだけでええわ」
「そういう人って猫様にモテるやつやん〜」
俺は人間にもモテモテやと鼻で笑ってきたので腹パンしといた。だるいわと言う光をひっぱって電車に乗り最寄りで降りる。通い慣れているそこにはすぐについた。
「二人でおやつ付きにしてください」
入口でおやつを選んで中へ入る。すぐさまおやつに気が付いた猫がわらわらと集まってきた。
「ひゅー!最高―!コレが欲しけりゃ私を満足させなさい!」
セリフと似つかわしくないデレデレの顔で床に転がると光に蹴られた。
「他のお客さん来たら迷惑」
「来たらどくし」
口では反抗しつつも大人しく座りおやつを広げる。我先にとむらがる猫にニヤニヤしながら少しずつ分け与えるが、なくなると猫は一匹もいなくなった。お気に入りの猫のところへ近寄るが頭より上の方へ逃げてしまってさわることが許されない。
「光〜さわらせてもらえな……」
光を見るとソファでスマホをいじっていた。膝にも隣にも足元にも猫がいる状態で。
「な、なんやそれ!羨ましい!ニャーレム!羨ましい!妬ましい!」
「うるっさ、おやつなんか使わんでも勝手に寄ってきたで」
「きいいいい!!!」
私だってニャーレムできるし、そう言って別のソファで座って待つが一匹も近寄ってこない。おかしいなあ、こうも相手にされないと飽きてくるな。カフェに移動したいと声をかけるため光を見ると、肩を震わせながら笑っていた。
「全然よってけーへんやん」
「べ、別にもう堪能したからええもん!」
「ほなカフェ行く?」
「行く!」
隣のカフェへ移動しいつものドリンクを頼んだ。光は期間限定の甘酒を飲みながらスマホをいじっている。
「朝からずっとスマホばっかり」
「この動画めっちゃおもろいで」
見るかとスマホを渡されたので再生すると、私が猫カフェに入ったところから始まった。
「え!なにこれ!ずっと撮ってたん!?」
「座っても寄ってこーへんで悲しい顔してるところまでバッチリ」
「もー!消してや!ひどい!」
「消さんし」
削除をタップしようとしたがスマホを奪い取られてしまった。
「せっかくなら猫撮りなよ、私なんか撮っても意味ないやん」
「猫映ってるやん」
「オマケみたいな感じやん」
「オマケやん」
「え?」
「え?」
ねえ、今のどういう意味?
そう聞きたかったのに、もう出よかと言ってさっさと出てしまった。慌てて追いかける。
「光、さっきの」
「ゲーム見たい、あっち行こや」
何度も聞こうとして遮られる。もういいや都合の良いように受け取っておこう、マフラーでも隠れない真っ赤な顔が答えだと思う。寒いからと伸ばされた手をそっと握り返した。
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