それってもしかして


「さっむーい!春は?春はどこへいったの??」

寒い寒いと騒いだところで暖かくなるわけではないのに、先程から俺の隣でひたすら寒いと言い続けるこいつ。

「ブン太、コンビニ寄ろうコンビニ」

返事を聞く前に早歩きでコンビニへ向かっていく。

「なまえ速いって、コンビニは逃げねーよ」

「あまいよ!ブン太はあんまん並みにあまいよ!」
こっちを振り返ってキッと睨み付ける。

「は?なにがだよ」

「早歩き!そしてコンビニで肉まん!」
名付けてホカホカたーいむ!!!

得意気に言うこいつはやっぱり阿呆なんだと思う。
そもそも何故俺がこの阿呆と歩いているかって。
俺の親とこいつの親が仲良しのため俺達も関わる事が多くて。今回は自分達のお茶会のお菓子が足りないから二人で買ってこいと言われたのだ。

今日は俺の家でお茶会でなまえも来たとわかった時に睨み付けたけど本当は嬉しくて。この時間もラッキーなんて思ったりして。
つまり。なにが言いたいかと言うと。この阿呆なみょうじなまえが好きだってこと。

次第に楽しくなってきたのかスキップしだし鼻歌なんか歌ってやがる。

コンビニに入った所ですぐにレジを向かおうとするところで「なまえ、こっち」とお菓子の棚を指をさす。

「お菓子もコンビニで充分だろい」

「ああ!そうだよね!」

こいつはどこまで買いに行くつもりだったんだ。
コンビニを出るなり肉まんに食いつく姿を見てふ、と笑いがこぼれる。俺はさっき言われたあんまんのせいであんまんの気分になり隣で同じように口にする。

買うまでは時間がかかるのに食べるのはあっという間だ。

そのためまた「寒いよー寒いよー」と言い出す。

「肉まん食ったろ」

「あの温もりは一瞬だけでした」
いっそ家まで走っちゃう?

笑いながらもこいつなら本気でやりかねない。

「休みの日まで走りたくねーよ」

「そのうちデブン太になっちゃうよ」

「お前処刑決定な」

「ごめんなさいでした」

しゅんとなりながら本当に寒いんだろうな。手をずっとすり合わせマフラーに顔をうずめてる。

「そんなに寒いの?」

「うん、女の子はねか弱いんだよ!」

「女は脂肪あんだろ」

「禁句!それ禁句だよ?!」

「はいはい」

「もー」

「そんなか弱い寒がりななまえを暖めてやるよ」
そう言って顔を見るとどういう意味だ?という表情をしていた。

だから。俺は正面からなまえを抱いた。
きつく。きつく。離れないようにぎゅうっと。

俺にとってはすごく長い時間だったが本当は一瞬だったんだと思う。

ゆっくりと体を離すと俺の髪よりも真っ赤な顔をして驚きを隠せていないなまえ。

「顔、まっか」
暖まっただろい?

そう笑えば

「真っ赤なのは寒いからですー!」
大きな声をだしてどすどすと俺より前を歩く。

やってしまったなーどうしようか、そう思い後ろをついて歩いていたらなまえは立ち止まりこちらを見る。

「なんだよ……」

なまえは無言で少ししかめっ面でぐっと手を出してくる。これは手を繋ぐ、ということで良いのか戸惑いながらも握ると満足そうににっこり笑ってまたスキップをしだす。

「おい」

「なあに?」

「こんなんされたら期待すんだろ」

「先に期待させたのはブン太だよ?」



それって。



「ブン太は今日から私の彼氏だね!」

「じゃあなまえは今日から俺の彼女だな」





寒い日も悪くないね、とすっかりご機嫌な彼女。