(ベランダを通して行ったり来たりできる設定です)
ベランダから物音が聞こえたと同時に、聞き慣れた声がした。
「こんこんこーん、寒いからはやく入れてくださーい」
「…………チッ」
「ありがと、仁くん」
「なまえ、前にも言ったが今何時だと思ってやがる」
「うん」
「返事になってねぇ」
「うん」
「…………ハァ」
彼は呆れた声をだしたが、彼女の様子がいつもと違う事に気付いていた。そのうえで、何も聞かない。
「ちょっと待ってろ」
彼女をローテーブルのそばに座らせると、彼はブランケットをそちらに投げて部屋を出た。
「おらよ」
少ししてから彼が戻ってきた。乱暴な言葉とは裏腹に、静かにマグカップが置かれる。
「……ココア?」
「甘ぇもん、好きだろ」
そうして彼は、彼女の隣にどさりと座った。
「仁くんは優しいね」
「あ?」
「なんでか今日はイライラしちゃって、そんな自分に疲れたんだ」
「ここにきたら明日からまた頑張れる気がして、来ちゃったの。ごめんね」
膝を抱えて俯くその姿は、いつもの彼女らしくない。だから、彼の手は自然と彼女へと伸びる。綺麗にブローされた彼女の髪の毛が、一気に乱れた。
「無駄に謝んな」
「……ありがとう、これ飲んだら帰るね」
彼は、いまだ顔をあげない彼女に声を掛ける。
「別に、ここにいたらいい」
その言葉に彼女はやっと瞳をのぞかせて、微笑んだ。
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