◇誕生日プレゼント

私の好きな人は明るくて純粋でムードメーカー。どこに惹かれたかと言うと、私とは真逆のその性格。

私達の間にはクラスメイトという関係しか成立していなくて、友達ですらない。

三年になった時、自己紹介で「忍足謙也です」と無垢な笑顔を見せられてから意識しだした。いわゆる一目惚れ。お昼の放送が彼の時はわくわくする。引っ込み思案な私はアプローチなんて到底できない。彼とその友達が教室で騒いでる内容から彼の情報を得られることもある。放送も、情報も、一方通行に聞いているだけ。最近得た情報では今日が誕生日だということ。その前に得た情報ではイグアナを飼っている、そして変わった消しゴムを集めているということだった。

私はどうにかして彼にプレゼントを渡したいと思い色々店をまわってみた。イグアナのヌイグルミはなかったし、消しゴムも持っていそうな物ばかりだった。

諦めかけていた時に入った中古屋さん。そこには年代を感じさせる物がそこらじゅうに置かれている……というよりは放置されている状態だ。これはプレミアつくのではないだろうかと思える物から、もはやゴミに見える物もあった。

物珍しさからじっくり見ていると恐竜の形をした消しゴムがいくつか置いてあるのを見つけた。あ、こういうの可愛いかも、とよくよく見てみるとイグアナの消しゴム。

それを見た瞬間どくんと心臓がなる。

慌てて奥にいる店員さんを呼び購入した。家に帰ってから、折り紙におめでとうの一言を書くとそれで消しゴムを包んだ。

直接渡す勇気はないので今朝は早くに登校。朝練がある彼の机に忍ばせようと思ったが、なぜか机の上に筆箱が置いてある。いたずら心が芽生えその中に消しゴムを入れた。

筆箱、開けたら驚くかな……想像すると自然と笑みがこぼれてしまうので、なるべく顔を引き締めた。

狙い通り彼は一時間目の授業中にも関わらず「なんやこれえええええ!!!すげええええ!」と飛び上がり、先生に「騒ぐならオチつけえ」とちょっとズレた説教をくらっていた。それを私は斜め後ろの席から見て笑う。

この時の私は知らなかった。朝こっそりプレゼントを入れているところを見られていたことを。だから放課後彼に声をかけられた時は心臓がとびでるかと思うくらい驚いた。


「みょうじ!」

「忍足君、どうしたの?部活は?」

「今から向かうとこ、それよりな」

「うん?」



「プレゼントおおきに!宝物にするな!」



それだけ言うとさっさと部活へむかっていった。私はしばらくそこで呆然と立ちすくむことになる。

後々知ったのだが部長である白石君が、日直のために一度教室へ向かった時に開いていた扉から偶然見ていたらしい。

忍足君があまりにも誰からやろ誰からやろ、と言うもんだから教えてしまったと。

でもそのおかげで忍足君とは話す機会が増えたので白石君には感謝している。



「みょうじおはよう!今度言うてた中古屋連れてってーや」