オヤジの娘になって気がつけば七年経っていた。長いようであっという間の時間。こんなに過ごしておいて、やっと私はオヤジの娘なんだこの船の一員なんだと言えるような気がする。つい最近までなにもかもがいっぱいいっぱいで、ようやく考えるより体が動くようになった。
ナースさんや他の隊の人と緊張せずに話ができるようになったのも割と最近だと思う。
たまたま気がついたら今日がちょうど七年目で、そんなことを考えながら甲板で夜風にあたっていた。
「体、冷やすぞ」
ふと声をかけられ、ふりかえると一番隊隊長のマルコがいた。
「おつかれさまです」
彼を好きになったのは、いつだっけ。
「ほら」
気だるそうな目元に短い言葉。少し呆れているように見える彼の手元にはブランケットがある。
「ありがとうございます」
遠慮なく羽織るとふわっとマルコの香りがした。ただそれだけでキュンと胸がしめつけられる。
こういうさりげない優しさや、みんなからオヤジでさえも頼りにし、それを統括する彼に惹かれるのに時間はいらなかったと思う。
いつだったかイゾウにマルコにも若い時があったと思い出話を聞いた時は今からでは想像できない幼さがあって、それがまた愛おしく感じさせた。
私とは比にならない長年の日々を時間を過ごしてきたからこそ溢れでる色気とでもいうのだろうか。
照れ隠しで好きなところを頭にたくさん思い浮かべてみるがよけいに気恥ずかしくなるだけだった。
顔を少し仰いでマルコを見ると、シャツを一枚羽織って前ははだけている姿。思わず口をだしてしまった。
「あなたの方が体を冷やしそう」
マルコはキョトンとしたあとにクツクツと笑った。
「そうだな、じゃあそれに入れてくれよい」
それ、と指さしたのは先程マルコから渡されたブランケットだった。今は私の体を覆うように肩からかぶっている。入れてくれ、ということは密着することになるのでは……。
好きだからこそ意識してしまうがマルコはきっと何も思っていないだろう。ただの妹だ。そう自分に言い聞かせて少しマルコの方にズラして広げた。
「どうぞ……っていうのも変ですね、借り物なのに」
「じゃあ、俺のだし遠慮なく」
ニヤリとなにかを含むような笑みにドキドキと心臓の音がうるさい。
ゆっくり近づいて私の手からブランケットをとると遠慮なくひっついてきた。少しばかり窮屈ではあるがお互いきちんと肩にかかっているのを確認できた。
「……大きくて良かったです」
「そうだなあ」
近すぎてもう顔は見えないけど、見られることもない、良かった。鏡を見なくてもわかるくらい赤いに違いない。マルコの体温がゆっくりと私へうつってくる。このまま時間がとまればいいのに。
「心臓、うるせえなあ」
「え!?」
ポツリとはなった台詞。急に確信を得たような言葉にうまく返すことができなかった。まさかバレると思っていなかったのだ。だって隣にいるだけで聞こえるなんて誰が予想しただろうか。
「あ、や、あの、これは、その」
なんと言い訳をすればいいかわからず吃ってしまう。こういう時、頭の回転がはやい人が心底羨ましいと思う。
マルコが私の顔をのぞきこんできた。
「真っ赤だ」
「ち、近いです!」
キスでもされるのかというくらいの近さに後ずさると腰に手をそえられる。
「なんだ、なまえも緊張してんのかい」
「しますよ、そりゃ」
「なんで?」
「なんでって」
「逃がさねえよい」
引き寄せようとする力に抗おうとするがうんともすんともいわない。私は逃れようと必死でマルコの言葉の意味も柄にもなく少し焦っているのも顔が赤いのも全部気がつかなかった。