おみやげ

次の島を航海士が見つけたところでマルコ隊長が一足先に偵察へ行く。いつものことだ。大体三日くらいで戻ってきてオヤジに報告して、そこからどの隊が何をするか振り分けていく。今回もその流れだろう、一日でも姿が見えないと寂しくなるくらいには彼に恋をしている。
はやく、会いたい。その気持ちが通じたのか甲板からマルコだ!帰ってきた!の声が聞こえてくる。慌てて出ると不死鳥の姿から人の姿に戻るところだった。いつ見ても綺麗だ。次から次えとかかる声に答えている彼に見惚れていると、ふと目が合った。
みんなに手を挙げてからこちらへ向かってくる。絡み合った目線を外すことができず、また動くこともできずにいるとすぐに目の前までやってきた。

「おかえりなさい」

「ただいま」

なんとか口にできた言葉に返答がありほっとする。おかえり、ただいま。たったこれだけのことだけど、当たり前にできる生活をしていない私にとって、とても特別なことだ。

「どうでしたか、街の様子は」

「賑わってて良さそうな所だった」

「それは楽しみです」

「これ」

手を差し出してきたので反射的に手のひらを上に両手をだすと、ポンとなにかの重みを感じた。そっと自分の方へ寄せて見ると包みもない状態のブローチだった。

「綺麗……どうしたんですかこれ」

「歩いてたら店の人につかまったんだ」

「もらっていいんですか?」

「俺が持っててもしかたねえよい」

それもそうか。この場に居合わせてラッキーだった。そう思い素直に受け取る。

「ありがとうございます、大事にしますね!」

「お土産か、良かったな」

両手で包み込むように抱きしめると、後ろから聞きなれた声がした。

「サッチ隊長」

いらしたんですね、の言葉はスルーされてしまい、そのまま彼らの会話がはじまる。

「マルコ、買わされるなんて珍しいこともあるんだな」

「特産品らしくてな、綺麗だしまあいいかと思ったんだ」

「ふうん?なんて言われて流されたんだ?」

そんな言葉だけじゃ買わないだろうとしつこく絡むサッチに渋々といった感じで答えた。


「……可愛い子にピッタリって言われただけだ」

「へえ、それで?」

「なまえしか思うかばなかったし」

さっきも言ったように特産品で〜と返すマルコ隊長に驚いた。可愛い子に?私しか思いつかない???

「いやいや!ナースさんとか!可愛い子ならいくらでも!」

本当に自分がもらっていいのかわからなくなり、ブローチを差し出すと彼の手が重ねられた。

「迷惑じゃなきゃもらってくれ」

迷惑なわけがない。会えない間、思い出しているのは自分だけだと思っていたのだ。それなのに彼も私のことを思い出して、しかもこんな素敵なものを自分だけに買ってきてくれたのだ。宝物以外にあるわけがない。
しかし可愛い子でナースを思い出すわけでもなく、私が思いついたということは子供っぽいということだろうか。確かにナース達は可愛いより綺麗が似合う。
そんな考えが顔にでていたのだろうか、サッチ隊長に頭を撫でられた。

「似合ってるよ」

「俺が選んだんだ当たり前だよい」

「お前も素直じゃねえなあ」

「うるせえ」

遠ざかる二人の会話に時間差で顔があつくなってくる。ひょっとしてそうだったりするのだろうか。ずるい。本当にずるい人だ。もしあのまま二人で会話が終わっていたら知らなかったことが多すぎる。その内容に期待してしまわない方がおかしい。ただ買わされたんじゃない、選んでくれたんだ。なくしたくないそれを自慢するかのように胸元につけた。