小ネタ


単なる思いつきのメモ帳
更新履歴には乗りません

▽ジョーカー・ゲーム

書いてみたは良いけれど、しっくり来なくて没にした実井成り代わりの導入部分


 理由は不明だが生まれなおした私は、とても可愛らしい男の子だった。
 大きな瞳はくりくりとしていて、柔らかい髪の毛は触り心地が良い。同じ年代の子どもと比べて華奢な体躯だったが、日に焼けにくく真白い肌には良く似合った。
 女みたい、と仲間外れにされたってかわいい瞳に涙を浮かべて大人に泣きつけば、叱られるのは決まって私を仲間外れにした方だった。
 そんなかわいい子供の中身はとっくのとうに成人した女性で、成人した女性である私はどういった行動をしたのなら大人が喜ぶか熟知していた。
 これが二週目特典か、と内心ほくそ笑んだのも良い思い出だ。
 勉強もできた。運動だって人並み以上だ。容姿にも恵まれている。それになんといっても、声が良い。
 少し低くて耳に良く馴染む。だって、まるまま、前世で好きだった声に、そっくりだ。
 声帯の妖精さんの悪戯か、はたまた祝福か。声変わりをすっかり終えた私の声は、前世でファンだった声優さんの声と同じだった。
 神様ありがとう!!
 そのことに気が付いた時私は、思わず天に祈りを捧げた。いや、だって、これ、あんな台詞もこんな台詞も言いたい放題聞きたい放題じゃん。誰しもが一度想像……もとい妄想したことあるでしょう? 好きな声優さんに好きな台詞を囁いてもらいたい、って!!
 今なら、ニートやパンダ、闇医者でもバスケ部員でもなんでも再現し放題!! ひゃあっほい!!!!
 声変わりを終えてからいきなり、色んな台詞を言い始めた息子に両親は怪訝な反応だったが、役者に憧れがあって! と、かわいく言えばそれで納得してくれた。間違いないよ声優だって役者だよ。
 いやあ、いいわ、これ最高だわー。と、のほほんとしていた私はふと、情勢のことを思い出す。今は昭和初期、第二次世界大戦まったなし。に、加えて福山潤ボイスの可愛らしい青年。
 ……OK、皆まで言うな。
 ああこれ、見た。見ましたわ。スパイアニメですね分かります。
 今の私は、高等教育機関に在籍している。ちなみに、東京ではない。片田舎だ。周りは田んぼばっかりで、夜になると蛙やら虫やらが五月蠅い。
 ここが本当にあのスパイアニメの世界線だとして、私が”実井”になる青年だとして。恐らくこのままでは魔王の目に留まらないだろう。良い大学に、行かなきゃ駄目だ。
 これはちょっと、頑張らないと。今までは二週目というアドバンテージに慢心していて、本気で、真面目に過ごしていなかった。パンダみたいに。だけど、うん、折角だから。頑張ろう。とりあえず、帝大・早稲田・慶応のどれかに入れば間違いない。
 大丈夫できるできる! と、心の中の太陽神に励ましてもらった私は無事に、D機関入りすることができたのでした。え? いや、努力とかそういう場面って人に見られるの恥ずかしいから、割愛。それに、大事なのはこれから。スパイになってから初めて、私は”実井”として生きることができるのだから。


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