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 ぐらぐらと、頭が重いのです。
 ぬるま湯で沸騰させられているかのような、そんな不思議な気持ちです。
 頭の中から熱が這い出てきては空の体を侵食していきます。
 僕はベッドに横たわり、ただただ耐えておりました。ベッドのすぐ傍には呼び鈴があり、鳴らせばすぐにねえやが来てくれるでしょう。そうして慌てた声で言うのです。常義ぼっちゃまどういたしましたか、えぇすぐにお医者様をお呼びいたしましょう、と。
 そしてまた慌てた様子で僕の部屋から居なくなるのです。僕の言葉も聞かずに出て行ってしまうのです。
 けれど違うのです。
 僕が伝えたいのはそんなことではないのです。
 ただ、近くに居て、手を握っていて欲しいだけなのです。
 風邪をひくと、どうにも人恋しくて仕方ありません。別に、ねえやでなくても構いません。料理人でも庭師でも、兄様方でも。一番良いのは、お父様かお母様が居てくれることですが、二人ともお忙しいのであまり僕には構ってくださいません。
 お父様は大兄様をお連れしてお仕事へと行きました。なんでも、後継ぎのための勉強だそうです。
 小兄様は家にいらした教師の方と勉強をします。常なら僕もそれに加わるのですが、今の僕は病気なので動けません。
 どうやら小兄様は、家での勉強がご不満のようです。そうでしょう。僕も共に学習するなど嫌に決まっていますし、お母様も小兄様を大兄様のように同行させるよう、お父様に進言なさっておいででしたから。
 それに対してお父様は困ったような笑みを浮かべて断っていました。小兄様は仕事の場へと共に行くにはまだ幼い、とおっしゃるのです。確かに、大兄様はすでに十を五つほど越しておいでですが、小兄様は十までまだ一ほど足りません。お父様は小兄様が今の大兄様と同じ年の頃になったらお仕事にお連れするに違いありません。
 より早く勉強していた方が優秀になる、とお母様は小兄様がお父様のお仕事に同行させようと食い下がっておりましたが、すげなく断られています。そのことで、夜に諍いを起こしているのを知っています。
 人の怒る声というものはどうにも好きになれません。怒声を聞いている周囲もまた、不機嫌になるからでしょうか。だから僕は、誰かを怒らせないように努めています。実践するのはなかなかに難しいものです。他人の心の機微とは、総じて理解しがたいものだからです。
 ぼんやりとした熱を閉じ込めるように瞼を閉じると、星空が見えます。ちかちかと瞬いては消えていきます。遥か彼方を眺めると、太陽と月が狼に追いかけられながら順番に役割を果たしています。
 狼がこちらを向いて大きな遠吠えをするのを、耳の奥で感じられます。
 七度目の誕生日の、前の日のことです。