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しばらくだらだら過ごしていると、お団子とお茶を女性が持ってきてくれた。漫画でしか見たことのない三色団子だ!
近所のスーパーに売ってるのってみたらしがあんこだけだったからなぁ。このレトロ感が逆に新鮮っていうか。
「お団子だーおいしそう!」
「食べ過ぎて御夕飯が入らない、なんてことにならないように気をつけるのよ?」
おおー! ママみが強い……。晩御飯も出してくれるんだ。楽しみ!
「いただきまーす!」
はぐ、とパクつく。
え、美味しいこれ……。もちもちしててほどよく甘く、まるで疲労がふっとぶかのようなおいしさだ。病みつきになるおいしさとはこのことか。
あまりにも夢中で食べているからだろうか、小さい子を生暖かく見守る視線を感じる。
結局、彼女の分のお団子まで貰ってしまったが、お腹は大満足だ。お茶を飲んで一息つく。
「包丁くん突然で悪いのだけどね、その短刀を私に預けて欲しいの」
その短刀、とは?
耳慣れない言葉に頭を傾げながら彼女の視線の先を追うと、私の腰元に一本の刀が装備してあった。
私こんなの持ってたんか。なんというか、あまりにも違和感がなさ過ぎて全く気が付かなかった。普通なら銃刀法違反だ! とすぐ気づきそうなものだが、この短刀は私が持っているのが一番良いような……そもそも手放してはいけないような、そんな思いを抱かせるものだった。
「これ……持ってちゃダメ……かなぁ?」
ここまで親切にしてくれている彼女の頼みを断るのは気が引けるが、ダメ元で尋ねてみる。くらえ、必殺ショタの上目遣いプラス涙目。
おずおずと尋ねた私に、一瞬だが彼女の眼が細められた。そうだよな……犯罪は犯しちゃ駄目よね。
「お母さんの言うことが聞けないの? 包丁藤四郎」
じわじわとした圧を感じる。
これはあれだ、早くゲーム辞めないと取り上げるぞオラ晩飯だぞゴラ、の圧力に似たアレだ。
久々に感じた、母親の圧力にびくーんと身体が反応してしまう。び、びびってなんかいないんだからね! でも電源を強制的に消すのは止めて!
私の怯えを感じ取ったのだろう彼女は、先ほどの圧を霧散させてハグをしてきた。
「ああ、怖がらないで。刃物なんて持っていたら危ないでしょう……お母さんが預かっておくからね。お願いだから私の言うことを聞いて、包丁藤四郎」
彼女を困らせたいわけじゃない。だけど、この短刀を持っていないといけない気がするのだ。でも。だけど、彼女に名前を呼ばれると逆らえない、そんな気にもなるのだ。
「え、あ、あの……捨てたり壊したりしないなら、いいけど……」
ハグされたままぼそぼそと伝えると、パッと体を離される。なんか、彼女はすっごく嬉しそうだ。だから、うん。これで良かったのだ。たぶん。それにほら、彼女の機嫌を損ねるとそこらへんに投げ出されるかもしれないし。
短刀を受け取った彼女は、満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう! やっぱりあなたは素直な良い子ね! ……あの子たちとは違うわ」
あの子たちって誰だ? と、疑問に思うが、今の私は短刀を手放してしまったことによる謎の喪失感に襲われていた。
己の身を半分に裂いて、どこか遠くへやってしまったかのようだ。