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彼女が帰って来るまで部屋の中に居ても良かったが、こんなに広い家なんだ。と、なればやることは一つ!
「探検してみよう!」
よし! と意気込んで、私は障子をスパーン! と勢いよく開けた。おお……良い滑りだ。ちゃんと手入れしてあるのだろう。料理も掃除もパーフェクトとかすごい。
一歩。廊下に踏み出した。眼前には、雪見障子から見た庭の風景。左右には、似たような障子がいっぱい並んでいる風景。うーん、どこに行こうかな。下手に出歩くと、広いから迷いそうだ。まぁ、もし迷っても夕方までうろうろして、彼女が帰ってきた頃合いを見計らって大声を出して、見つけてもらおう。
どちらにしようかな。かみさまのいうとおり!
決まった。右手に行ってみよう。
外に面してる廊下って縁側っていうんだっけ? 一般的な家にしか住んだことないから分からないや。縁側っていうとお寿司のネタしか出てこない。
ともかく、廊下をぎしぎし鳴らしながら歩く。障子の中も、最初は開けて確認していたが、私の部屋と同じようなものだったので割愛。
角を曲がったり、内に入ったりしてしばらく進むと、なんだかひんやりとした気配を感じる部屋の前にたどり着いた。適当に歩いていたため、どうやってここまで来たのかはさっぱり覚えていないが、たぶんかなり奥まったところにある部屋なんじゃないだろうか、と、そんな気になった。
ゲームだったらここで一旦セーブだな。
と、脳内で茶化しながら私はその部屋の扉に手をかけた。
どことなく嫌な雰囲気を感じさせた割にはあっさりと開いた。小さな鍵とかなくても良いんだなぁ、とか思いながら部屋の中を入口から見渡す。
部屋の中は、今までの純和風な作りに反して、コンクリート造りだった。恐らく何かの保管場所で、今の私からすると大きな棚が二つほど並んでいた。ぱっとみた感じでは窓がなく、陽が入らないため薄暗い。それでも、掃除だけはしてあるのかほこりっぽい感じはしなかった。
「なんだろう」
棚の中には両手で抱えるくらいの大きさの何かが安置されていた。お守り袋のような布で包まれた箱、のようなものだろうか。
「骨壺、みたいな……?」
え、やだ、ちょっと怖い。
少しだけ近寄って見てみると、うん、骨壺っぽい。
棚には名前と番号が印刷されたテプラテープが貼ってあった。今剣11番、平野藤四郎31番、厚藤四郎33番……。藤四郎、って名前、聞き覚えあるよね。私、今、包丁藤四郎。
……全員彼女の子どもで、ここに安置してあります、って訳じゃないよね。いや、骨壺(暫定)は二十弱ある。そんなに子だくさんな訳ないだろう。それに、飛び飛びの謎の番号はなんなんだろうか。
「私もここに入れられちゃうのかな……」
彼女の機嫌を損ねたら、こうなっちゃうのかな。……いやいや骨壺と決まったわけじゃないだろう。うんうん。
嫌な方向にばかり考えてしまう頭を振って、考えを振り払おうとした。ちょっと悪趣味な忘れ物入れとかかもしれないじゃないか。
とりあえず見なかったことにしよう。
私は、そっとこの部屋を後にした。