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完全に迷ったよね。
謎の小部屋から抜け出した後も、意味もなくうろちょろしてたら完全に迷ったよね。もうここがどこだかさっぱり分からない。助けてー! 迷子のお子さんがここに居ますよー!
一回彼女にお願いしてしっかり案内してもらった方が良さそうだ。自分の部屋とかキッチンとかお風呂場とか、主要そうな所をちゃんと教えてもらわないと駄目だ。
言い訳すると、この家がやたらと広いのがいけないんだよ……。
廊下に寝っ転がって不貞腐れる。板張りだから固いし冷たい。私はポシェットから飴を取り出して舐めた。甘い。
ガリガリと奥歯で齧って唾液と共に飲み込む。あーあ、家の中で迷子とかお笑い草だぜ。
やっぱり彼女が戻ってくるまで、ここに居よう。もう下手に動かない。誰かに発見してもらうのに期待するのだ。
廊下の隅によって、横向きになって目を閉じた。
「包丁くん、大丈夫?」
ふわり、と甘い香りが鼻腔をくすぐったかと思うと、目を開けた先には彼女が居た。
!
「大丈夫じゃないよー! 迷ったんだよ!」
助かった! 帰ってきてくれてサンキューマッマ!
私はいかにも怒っています、といった風に飛び起きてそのまま彼女にハグをした。寂しかったんだぞー、心細かったんだぞー、というのも押し出すのを忘れずにしっかりアピールしておいた。いやまぁ、子どもはこれくらいわがままな方が良いかな、って。
「ごめんなさい……。もう少し早く帰ってくれば良かったわね。……そうね、どうせ二人で住むのだから、もう少し手狭でよかったわ。あの子たちはもう居ないのだし」
彼女に手を引かれて立ち上がる。それにしても、あの子たち、というのは一体誰のことなんだろうか。もしかして……いやいや。あんまり突っ込んで聞いて、地雷踏むのも怖いしなぁ。
「そんなことよりお腹空いた! ご飯まだ?」
少し甘えたな雰囲気を醸し出して、手を握ったまま寄り掛かると彼女は見るからに機嫌を良くした。素直に甘える子どもがお好き、と。
下ごしらえは終わっているのよ、と言った彼女に手を引かれて家の中を進む。住民なだけあってその足取りは確かなものだった。私が散々迷ったこの迷路をあっさり攻略してのけて、大広間にたどり着いた。
50人以上は軽く入りそうだ。こんなに広い部屋、初めてだ。どこの宴会場ですか? と思わず尋ねたくなったくらいだ。例えるなら、大奥の長い部屋みたいな感じ。そこに、会議室にあるみたいなテーブル、の座って使うバージョンが規則的に並べられている。
入口近くの席に私を座らせた彼女は、準備してくるわね、とにこにこ顔で出て行った。座布団に座ってしばらく待っていると、どこからともなくハンバーグの良い匂いがした。