仲良くしたって






何故か梟谷を応援するなと言われ、
俺たちの試合を見ろと言われ、
LINEを交換させられ、
律儀に試合場所の地図を送ってきて
その後も何故かLINEが来る。

自分の話、東京の話、部員の話。
そのおかげであたしは稲荷崎の部員は覚えた。
取り敢えず宮兄弟というか稲荷崎は
キャプテンの北さんの正論パンチが怖いらしい。
あたしの今の状況を聞いたら、
北さんの正論というのはどう答えるのか
少し考えたけど、考えるのをやめた。



「生駒さんツムと連絡交換したん?
昨日めっさ自慢してきて鬱陶しかったんや。」

「え、ああ…うん。
宮侑が梟谷応援すんなって、
自分達の試合見れば応援したくなるから
練習試合見に来いって言われた。」

「あいつほんま強引やねん。ごめんな。」

「…双子なのに気配り方が違う。」

「あいつは人格ポンコツ野郎やねん。」

「やばいじゃんソレ。」

「あいつがおるから俺は人に優しくすると決めてん。」

「改善はされないのね。」

「無理やな。」



宮侑はバレーしか脳みそが働いてないのかな。
バレーって、特にセッターって
周りとのコミュニケーションとか
性格の理解とかそういうの重要じゃないの?



「…生駒さんはなんで宮達の事フルネームなの?」

「え?ああ、なんかバレボーとか見てて
他所の選手って感じになるからかな…」

「それじゃない?侑が嫌なの。
他人行儀みたいなさ。」

「そんな事言われても…」

「遥ー!あたしらトイレいくけどいかんー?」

「あー…行く!」

「……あの女子の連れションって不思議でしゃあない。」

「ね。」



美南ちゃんに呼ばれて何人かでトイレに行った。



「なあ、遥。あたし言ったよな?
男バレと仲良うしとったら危ないって。」

「うん。でも自分の席で話しかけられるから。」

「あたしらんとこ来たらええやん。
ぼっちが可哀想やから治ら話しかけてんやろ。」

「バレーが好きとかずるいねんなー。」

「ずるいって…」

「美南な、中学から治の事好きやねん。
急に出てきて調子乗られると我慢できん。
この子優しいから仲良うしとるけど。」

「ええんよ。あたしほんまに
遥と仲良うしたいって思っとるし。」

「(……何カマトトぶってんだか…)」



強く言ってくるグループの1人明子ちゃんの後ろで
被害者みたいな雰囲気出している美南ちゃんに
あたしは思わず本音が出てしまった。



「……好きならなんでアピールしないの?」

「は?」

「そんな何年も片想いしてるなら、
アピールしたり告白したりすればいいじゃん。
なんで一線引いてファンで済ましてるの?
あたしそれが分からないんだけど。」

「はあ!?何言ってんねん!」

「調子乗らんといて!」

「だって、好きな人がいたら振り向いて欲しいじゃん。」

「ッ……だから、試合見に行ったりして…!」

「話しかけないの?」

「暗黙の了解ってのがあんねん!」

「本当に好きな人ならそういうの関係ない。」



京治は凄くモテるほどじゃないけど
好きな人は他にもいた。
告白を断ってるの何回も見て
あたしもその中に1人になりそうで怖かった。
それでもあたしは告白した。
これ以上待てないと思ったから。

結果実ってそれを投げ捨てたあたしは馬鹿だけど。



「とにかく、治達と仲良うしたら
もうグループ入れてやらんからな!」

「それは無理。」

「はあ!?(怒)」

「だってバレーの話するの楽しいし。」



あたしはいつからこんなに強くなったんだろう。