真っ直ぐに







「双子の事好きなのはええけど、
双子が話したい子いじめんのは止めや。」

「!」



トイレから出ようとしたら
低く冷たい声が聞こえて思わず立ち止まった。



「……すみません。」



美南ちゃんが泣きそうな声をして謝っていて
パタパタと走り去っていく音が聞こえて
誰が言ってくれたんだろうと思って廊下に出た。

そしたら目が大きくて整った人が
「廊下も走ったらあかんで」と呟いていた。
凄く落ち着いている人だ。でも知ってる人とは違う。



「…あの、ありがとうございます。」

「おん。盗み聞きしたわけやないんやけど、
治の名前が聞こえて気になってしもうたんや。」

「えと、先輩ですか?」

「おん。一応部長やらせて貰ってる。
それまでは俺補欠やったから
梟谷の子は知らんやろな。」

「北さん!」

「…なんで知ってるん?」

「あ、み、侑から北さんの事聞いてて…
悪口じゃないですよ?正論パンチだから
何も言い返せなくて怖いって言ってて。
でもなんであたしが梟谷って…」

「最近双子が楽しそうに話しててん。
雑誌も貸してあげてんねやろ?すまんな。」

「い、いえ!綺麗に返ってくれば大丈夫です!」

「自分強いんやな。普通萎縮する所やのに、
ちゃんと自分の意見言えてたやん。偉いな。」

「!、いえいえ!我が強いと言いますか…!」

「これからも双子らとバレーの話してやってな。」

「っはい!」



北さんはそう言って離れて行った。
ここ2年の階で3年はもう1階上なのに
どうしてこっちに来てたんだろう。
部活の伝言でわざわざ降りるのかな。
それとも双子が何かやらかしてたりして。







ーーーーー…稲荷崎部室*°



「最近双子が話しとる子、ええ子やな。」

Σ「!?(北が女子の話を!?)」



着替えながらポツリと話す北に
同級生のアランは驚いて半裸のまま振り返った。



「クラスメイトに双子と仲良くするな言われて、
バレーの話楽しいからあかんって言うとった。」

「強いな、ソレ。」

「な?東京の子は関西弁怖いって聞くし、
それでも自分の意見言えるんわ強い子や。」

「せやなー、女子のいざこざ怖そうやなぁ」

「俺もそういうんはよう分からん。
その子が言うててん。
好きならなんでアピールせんと
ファンでおるだけなんやって。
俺は双子がなんで人気あるんかも分からんけど、
その子の言うことはほんまやなと思った。」

「ライバルが多いし、
それこそ1人が頭抜けてると
その子みたいに呼び出しかかるんちゃう?」

「そうか。女子って大変やな。」

「な。というかその子可愛えって
ウチの学年でも言われてたで。可愛いかった?」

「どうやろな。そういうの好みの問題ちゃうの?
万人受けの顔って可愛えんか?」

「芸能人みたいな感じや。」

「テレビニュースしか見いひんから知らん。」

Σ「なんやおもんないな!」



珍しく女子の話をした北だが、北は北だった。