やっぱり好き






日曜日 練習試合当日

あたしは侑から貰った地図を見て
天神童大学まで来て体育館を探していた。
ファンが多い稲荷崎の事だから
練習試合もギャラリーがいるのかと思ったら
人がいなくて少し恥ずかしくなってきた。

大学生に聞いて体育館を教えてもらい、
聞き慣れたバレーボールの音に惹きつけられ
体育館を覗き込むと稲荷崎バレー部がいた。

よく見るといつからいるのか
ぽつりぽつりと観客もいるので
そこまでは浮かないだろうと
同じように上で見ることにした。

アップを見ていても強いのは分かる。
宮侑とアランさんのサーブが腕もげそう。
皆んなサーブも上手いしレシーブも出来る。
全国いってる高校だから当たり前だけど。



「(久々にバレー生で見るなぁ…)」



この空気感懐かしい。



「…ツム、生駒さん来るで。」

「!、ほんまや。私服ええなあ。」

「?、生駒さんの事好きなん?」

「?、普通にええ子やん。」

「普通が分からん。」

「お前ら練習試合やからって集中せえよ。」

Σ「「…はい。」」



双子が話している間に北さんが入ると
双子の背筋が伸びて分かりやすい。







ーーーーー…*°



試合が始まってからは夢中だった。

宮侑のセットは華麗だった。
ちゃんとスパイカーの事も考えてて
それでいて自分のやりたいようにやる。
跳ばせている。凄いなあ。

宮治との速攻は息がぴったりで、
アランさんも木兎さんみたいに
サーブもスパイクも勢いがあって強い。
角名くんのスパイクはなんか気持ち悪い。
たぶん体幹があって身体が柔らかいから
攻撃の幅が広くて止める事が難しい。
北さんはスタメンじゃなかった。
双子が調子乗り始めた頃に交代して
沈静させて返っていくのがちょっと面白い。

あたしはやっぱりバレーが好きだし、
稲荷崎のバレーも見てて面白かった。
だからといって梟谷応援しなくなるのは別だと言ったら
また宮侑がうるさそうでどうしたものか。



「(そろそろ帰ろうかな。
何セット見てても仕方ないし…)」



最後 宮侑のサーブで終わったセットを見て
なんやかんや3セットは見た。
普通の1試合分は見たと思うし階段を降りて
大学を出る事にした。お腹空いてきたし。



「ハル!」ガラッ

Σ「!」



声がして振り返ると宮侑がドアを開けて声をかけてきた。
汗だくで試合終わった後なのに何してるの?



「ハルってあたしのこと?」

「おん!呼び易くてええやろ!
というかなんで帰んねん!」

「もう3セット見たし!お腹空いた!」

「飯食ってから来いや!」

「試合は面白かったからまた見るよ!」

「当然や!」



面白かったっていうと
宮侑は嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。
そして宮侑の傍から宮治と角名くんも見えて
小さく手を振ってるのが見えたから
あたしも軽く手を振ると、宮侑は全力で返してきた。



「(子どもか(笑))」



思わず笑ってしまった。
バレーはやっぱり好きだ。どんな時でも。