ツインズ






つい最近人に優しく生きるって明言した治
その数日後顔のあちこちに傷や湿布が貼られて
不機嫌そうにむすっとした顔で教室に入ってきた。



「……(なんとなく話しかけたらダメそう)」

「おはよう 生駒さん」

Σ「、おはようっ(汗)」

「はよ…」



角名くんは普通に挨拶してくれたけど
治はあからさまにテンション低く一応挨拶して
珍しく何もなく自分の席について顔を伏せた。



「…治なんかあったの?(小声)」

「喧嘩。昨日の試合の事で。」

「(治調子悪そうだったやつか…)」



昨日はまた侑に誘われて試合を見に行った。
治は調子が悪かったのかミスが多くて
初めて途中交代を見た。それが原因だとしても
そんなボコボコに殴り合うほど喧嘩激しいのか。



「生駒さんも調子悪いって思った?」

「え?うん…さすがに。
でも調子悪い時だって人間あるでしょ。
何してもダメな時はダメっていうかさ…」

「せやんな!!」ガタッ

「う、うん(汗)」



いきなり元気になってなんだこの子は。



「たぶん治と同じ事言ったから嬉しいんじゃない?」

「あぁ…そう言う事…」

「ダメな時はほんまダメやねん。
なのにあの人格ポンコツ野郎はポンコツやねん。
自分が悪い時俺責めたりせえへんもん。」

「(結構煽ってるけど…)」

「(角名くんのこの目は絶対何度か責めてるな…)」



だんだん二人と話してきて
何を考えてるのか顔で分かるようになって来た。
話してて一番驚いたのはのんびりそうな治が
DNAは裏切らずバレーに関しては一緒だ。
二人でバレーを楽しんでる感じが時々ある。
梟谷とはやっぱり違ってこれはこれで面白い。



「ハルもダメな時あるんか?」

「あたしも中学は選手だったから
サーブもスパイクもダメな時ほんとダメで
自分にイライラした事があったなー
二人と比べたらただの下手くそなんだけど(笑)」

「なんでやめたん?」

「背は低いし運動神経特別良いわけじゃないし
よく脱臼しちゃう体質だから辞めたんだ。
もう癖ついちゃって自分ではめられるよ痛いけど。」

「うわ…」

「引かないでよ。」

「それはしゃあないな。
ポジションどこやったん?」

「ウイングスパイカー。
ほんとはセッターやりたかったけど
上手い子がいてその子がやってた。」

「ハルが打ってるとこ見てみたいな。」

「腕まで吹っ飛ぶよ。」

「こわ。」






ーーーーーー…*°




休み時間にジュースを買いに自販機に向かうと
ちょうど侑が教室から出てきた。
二人同じレベルで殴り合ったのか
怪我の具合が治と一緒で若干侑の方が多い。



「聞いたよ。治と喧嘩したって。」

「……」

「ジュース買うけど来る?」

「……行く。」



侑は拗ねたように口を尖らせてあたしの半歩後ろを
あたしの歩幅に合わせてついてきた。



「ハルも昨日の試合おもんなかったやろ。
また途中で帰ってたし。」

「昨日は夕方からバイトの面接あったから。
試合は楽しかったよ。治の交代で一年生かな?
っぽい子初めて見たし。」

「バイトしたら俺の試合見れんやん。」

「平日3日と土日どっちかだから
どっちかの試合は見にいけるよ」

「バイト先どこ?」

「ウチから徒歩15分のお惣菜屋さん」

「ほーん。」

「興味ないなら聞かないでよ…」



自販機についてカフェオレを買う。
侑はまだ奢るとも言ってないのに
「俺 ポカリ」とペットボトル要求して来たので
無言で紙パックのオレンジジュースを買ってそれを渡した。



「自分ケチやな。」

「奢ってるんだけど?(怒)
皆んなには内緒だからね?
治と角名くん集りそうだから。」

「おん。」

「落ち着いた?」

「まぁ…」

「そっか。ツインズは世話が焼けるなあ。」



あたしはそう言ってカフェオレを一口飲んだ。