思いがけなく






結局午後練までムスッとしていた双子だが
夜 高校2年生でも同じ部屋で二段ベットに寝そべり
無言の時間が耐えきれなくなり侑から治に
ウイレレをやるかと声を掛けてする事になった。

ゲームをつけている間
侑は少し考えたような表情をした後
治に遥の事について言ってみた。



「ハルってほんまええ子やな。」

「なんやねんいきなり。惚れたんか。」

「うん。」



侑が素直に答えると治は侑の方を振り返った。



「なんやねん。」

「ほんまなんやって驚いただけや。」

「バレー好きなんもそうやけど、
他の女子と違ってうるさないし、
俺が機嫌悪くても鎮めてくれた…」

「ああ…俺も話とったらお前の事少し忘れたわ。」

「はあ?まさっ…お前も…!?(汗)」

「…どうやろな。まだ分からん。」

「好きになるな!俺が先なんやから!」

「順番関係無いやろ。」

「あるわ!お前が好きになる前に
俺のもんにすりゃええねん!」

「そんな上手く行くか。」



せっかく仲直りしそうなのに
二人はまた取っ組み合いそうになり
母親の怒鳴り声でそれは静まった。






ーーーーーー…*°



「《びっくりしたよー!
グループLINEから消えるからさー!》」

「ほんとにごめんなさい。」



夜 LINEのフレンドにかおり先輩が追加されて
すぐに連絡が来て電話をしている。

経緯を聞いたらあたしの友達に頼んで
連絡先を入手したらしく
雪絵先輩以外教えてないらしい。

木兎先輩が寂しがってくれているらしく
しょぼくれモードが続いていたらしい。
最近やっと落ち着いてきているけど
たまに思い出してはしょぼくれる。
勝手にLINE抜けた奴なのに優しいな。



「《で、ストレートに聞くけどさ
赤葦とはなんで別れたの?》」

「それは…えと……私が悪いんです。」

「《赤葦も自分が悪いんだって言ってたよ。》」

「!、それは絶対違います!」

「《別れたって事は嫌いになったんじゃないの?》」

「……めちゃくちゃ好きです。
好き過ぎるから遠距離が辛くて
束縛して京治のバレー邪魔するのが嫌でした…」

「《……そっか…》」

「心配かけてすみません…」

「《なんて伝えて別れたか知らないけど
赤葦はあんな性格だからさ、
腑に落ちなくても自分が悪いんだって収めて
それでもまだ引きずってそうだよ。
木兎ほど分かりやすくはないけど
ある意味分かりやすいっていうかさ。》」

「でも……今更伝えても迷惑じゃ…」

「《迷惑かどうかはあいつが決めるよ。
一応ウチの大事なセッターだからさ、
中途半端じゃなくちゃんと気持ち伝えてあげて。》」



かおり先輩はやっぱりマネージャーの鏡だな。
ただのカップルの別れ話じゃない。
大事な選手のメンタル面を心配してなんだ。

あたしが悪い。

大事な選手を自分勝手に振り回して
勝手に抜けて、勝手に引きずって。
自分の事で頭がいっぱいだったけど
京治のバレー 今邪魔してたんだ。



「かおり先輩 ごめんなさい…。
ちゃんと京治に話して謝ります。」

「《あいつもそれだけ遥ちゃんが好きなんだよ》」



かおり先輩は最後に嬉しい事を言って通話を切った。

ちゃんと話さなきゃ。別れたかった理由。
こんな自分勝手な奴 早く忘れてもらわなきゃ。