ごめんね、







ーーーー……ごめんね、別れよう。



転校する日 見送りに来てくれた彼に告げた。

目が大きく開いて凄く驚いている様だった。
でも自分のコントロールが上手な彼は
フーと息を吐いて追いつかせて真っ直ぐな目で私を見た。



「俺じゃ不安?」



そう言われると思った。
京治が浮気する様な人じゃないのは分かってる。
でも毎日顔を合わせていたのにパタンと無くなって
連絡も毎日強要は出来ない。バレーに集中させたい。
我儘なんて言えるわけ無い状況で
あたしの選択は一つしか無かった。



「京治は悪くないよ。
ただ、あたしが弱くて臆病なだけだから。」



そう言ってあたしは新幹線の改札を通った。



ずるい別れ方だなって自分でも思う。







ーーーーー……*°





「遥ー、起きないと朝ご飯食べる時間無くなるよー」



いまいち慣れない部屋の中
未練たらしく別れた日の夢を見た事に不機嫌なあたしは
今日の転校日を明日に出来ないかと思ってしまう。

東京の時はリボンで留めるだけだったのに
新しい高校はネクタイで少しめんどくさい。
何より不慣れなのは東京では短かったスカートが
ネットによると神戸は膝丈膝下が普通らしい。
さすがに膝下は勇気があるので膝が少し出るくらいにした。



「なーに?急に真面目になっちゃって。」

「こっちだとこれが普通なんだって。」

「へー、上品な街ね。」



朝からパンをかじりながら
母親とそんな話をしてニュースを見てる。
ニュースもご当地感がある番組で慣れない。
結局自分の携帯を見て、
友達から応援メッセージが来て
あの人からは勿論連絡は無かった。



「遥なら友達直ぐ出来ると思うけど…、
お父さんの転勤とはいえごめんね。
せっかく楽しそうにやってたのに。」

「ううん。親と離れるわけにはいかないし、
こっちの友だち出来るのが楽しみだよ。」

「そう…なら良かった。」

「じゃあ、余裕があるうちに行ってくるね。
近いから迷う事は無いと思うけど!」

「うん。いってらっしゃーい。」



パパッと支度をして家を出ると
ちょうど桜の咲き始めの季節で
桜並木が綺麗に川の横に並んでる。

6階建てとそんなに高くないマンションの4階で
川沿いを歩いて行って10分程で学校に着く。
引っ越し先が決まってから自分の偏差値と
家の近くを考えてこの高校に決めていた。



稲荷崎高校。



男子バレー部が全国大会常連の強豪校だった。