満面の笑顔







声が聞きたいと言ってくれた。



となると電話をする必要があるわけだけど
正直京治の声を聞いたら泣く自信しかない。
勝手に振ったのに泣きながら弁解?ひど過ぎない?
然も弁解じゃなく理由を言って謝って……



「(きっと、それで終わるんだろうな…)」



今夜の9時 向こうも部活が終わって家で休む頃
あたしもバイトが変わる時間の今日午後9時
1ヶ月半ぶりに京治と電話する事になった。

嫌われても当然だと思ってる。
それでもどこか許して欲しい自分もいる。
寄りを戻したいなんて我儘は言わない。
一人の東京の友達としてバレーを応援させて欲しい。



「ハール。何怖い顔してんの?」

「…………あたしの真顔って怖いの?」

「難しい顔しとったで。」

「考え事してたの!真剣に!」



今度は侑に話しかけられて急に覚めた。
というか、なんで双子は人の顔見て怖いっていうかな!
女の子に失礼だって学べ!今後の為に!



「考え事って何?」

「言わない。真剣だから。」

「なんで?」

「いや、聞いてどうするの?」

「解決出来るかもしれんやん。
既読スルーの友達か?」

「スルーされてないし。」

「人の事無視する奴は放っておけばええねん。
今はここにおんねんから東京なんて忘れよ!」



侑はニコニコ笑顔でそう言うけど
あたしの顔だれか見て?
自分でも分かるくらいこいつに呆れている。

だからと言って事情を話すわけでも無く
もうこのまま勘違いしたまま
仮想の既読スルー友だちを作り出しといて欲しい。
今の状況伝えたら笑いのネタにされそう侑の場合。



「どした?人の顔ジッと見て。惚れたか?」

「…侑は元気だね。」

「人の事馬鹿にしとるやろ!」

「大丈夫大丈夫。」

「何がや!」



その後も休み時間の度に侑は治ではなく
あたしにガンガン話しかけて来て
授業中に考えた京治への言葉も
休み時間毎回侑に付き合って忘れてしまった。



「ハル また明日な。」

「じゃあね。」

「ばいばーい」

「ハル また明日な!」

「う、うん。」



今日の侑はやっぱりおかしい。
無駄にエネルギーを使っているような感じ。
治は角名くんは平常運転だけど侑だけ。






ーーーーーー…*°



「ツム。ハルに引かれてるで。」

「マジ!?脈ありなん!?」

「ちゃう。逆や。極端に変わりすぎやねんお前」

「はあー!?好きならアピールしとかんと
他所に持ってかれるかもしれんやろ!」



バレー部の部室で双子が堂々と話していると
角名はやっぱりだと勘づいていたし、
銀はそうなんやと初めて知ったような顔をする。
そして治はそのまま話を続けた。



「返って裏に出てしもうてるやん。」

「じゃあどうすりゃええねん!」

「知るか。」

「というか、既に東京のものかもしれないよ?」

「「は?」」



着替えながらぽつりと言った角名の言葉に
言い争う双子が同時にに振り向いた。



「最近真剣な顔で携帯ばっか見てるから
いたとしても上手くいってないかもだけど。」

「いやいや…それは既読スルーした友だちやって…」

「別れそうな彼氏の事 態々言わないでしょ。」

「でも別れるんやったらチャンスやん!」

「せやんな!(ほんまは既読スルーちゃうけど(汗))」

「遠距離しんどそうやもんな。
俺は信じて会えるように頑張るけど!」

「俺は絶対ムリ。俺が見えないとこで
他校のバレー見てるのとか嫌や。」

「……(お前が今嫌な奴になっとるやん)」



自分の学校応援しろとか試合見に来いと
遥に言って引っ張り出した侑に対して
治のツッコミに角名も察したが口に出さなかった。



ガチャ、
「恋愛禁止なわけ無いけど
お前ら気は引き締めておけよ。」

Σ「「「はい!!!(汗)」」」



急に北が部室に入って来て
反射的に侑と治と銀は焦って返事をした。
どこから聞いていたのか表情が全く読めない北に
侑は冷や汗をかくしかなかったが、
それよりも遥が連絡取っている相手が気掛かりだった。