バレーボール







「どれ?」



と言って、いきなり輪の中に入ってきたのは宮くん。
どれと言ってるのは月刊バレボーで
春高に出場した高校が載ってるやつ。
少しズボラなのか雑誌にシワがついてるし
これ12月号だ。今は4月なのに何故教室に?
でも12月号は沢山読み漁ったからページが分かる。

あたしは雑誌を手に取って高校名が載ってる
細かいページじゃなく、
エースが特集されているページを開いて
トンと指を指した。



「この人のチーム。」

「!、木兎のとこやん。」

「(木兎さん…!さすが5本指の男!
関西でも認識されてる!)」

「誰この人?」

「目でっか。」

「梟谷のマネやってたん?」

「え、う、うん。」



宮くんは角名くんの席に座って
あたしの方を振り向いて話し出した。
自己紹介の時まで興味なさそうだったのに。



「それがなんでうちに来たん?
うちがバレー強いの知っとったやろ?」

「それは…偏差値がちょうど良くて
家からも近いから選んだだけ。」

「近いってどんくらい?」

「ゆっくり歩いて10分くらい。」

「近いな!羨ましいわ!」



急にテンション上がったけど何だこの人。

というかずっと気になるのは
この人はどっちなんだって話。



「……ごめん、さすがに見分けられてなくてさ、
どっち…の人?セッターとウィングスパイカー。」

「どっちやと思う?」

「分からないから聞いてるんだけど!」

「マネージャーやってたのに
ライバルチームの顔覚えてへんのかい。」

「…いい、バレボーに答えあるから(怒)」

「あ、ズル。返せや俺んの。」

「うるさい。というかなんで4月に12月号持ってんの。
明日には5月号発売するのに。」

「ちょうど机の中に入っとったんや。」

「だらしないなー。」

「返せや。」

「見してくれたじゃん。」

「もう見せへんわ。」

「あー!何抜け駆けしてんねんサム!」

Σ「!」ビクッ

「……うるさいのが来よった。」



雑誌の取り合いをしていたら廊下から大声がして
思わずびっくりして雑誌を落としてしまった。
まあ元々ボロいから良いけど。
拾い上げようとするとちょうど宮侑のページだった。



「転校生女やから見たろ思ったら
さっそく声かけとるやん!なんやお前!ミーハーか!」

「煩いわ。俺の勝手やろ。
態々別クラスから来たお前がミーハーや。」

「うっさいわボケ。一回見ときたいやん。」



目の前におんなじ顔が2人いる。
でも前髪の分け目と髪色が違う。
見分けるのはこの2つがポイントなのか。
雑誌を見て顔を上げると
別クラスから入ってきた宮が宮侑だ。
目の前でキレてるのと雑誌と見比べると
雑誌の方はだいぶすましてる気がする。



「なんでバレボー見せてんねん。
お前載ってへんやん。」

「東京代表の学校おったんやって。」

「へー!そうなんや!井闥山か?」

「違う。」

「他どこや。東京って。」

「(む…)梟谷です。」

「フクロウ…ああ!
めっちゃキレキレのストレート打つ人や!」

「そう!木兎さん!」



あたしは思わずテンション上がって声をあげた。

その声に自分でハッとして恥ずかしくなった。
転校生がいきなりでしゃばってたら絶対いい事ない。



「なんや自分めっちゃノリええな!
東京のやつはもっとすましてるかと思ったわ!」



満面の笑みで言われてあたしは思わず目が開いた。