新しい生活






「遥おはよう。」

「おはよー」

「おはよー」



転校1日でクラスメイトと馴染めたのは
クラスメイトがフレンドリーだからだと思う。
初日から質問攻めだし宮ツインズと話してたら
周りもめっちゃ興味持ってくれて
沢山話しかけて来てくれた。

稲荷崎はバレー部が有名だけど
吹奏楽も全国大会出るようなとこらしくて
昨日も午前のHRしかなかったから
午後から楽器の音が良く聞こえていた。
体育館の前は通ろうとしなければ通らない距離。
力強く打ち付けるスパイクの音は
あたしにはもう届かないんだろうな。



「………(バレー部のLINEも抜けて
感じ悪い後輩だったよねきっと…)」



こっちに来る時に向こうのグループLINEを抜けた。

皆んなの楽しい会話を聞くのが辛くて。
あの人と繋がるのが怖くて。

と言っても個人LINEでも連絡来る事は無かった。



「……(早く忘れよう。)」

「…はよ。」

「!、おはよっ」



角名くんに話しかけられてびっくりした。
昨日は全然話しかけられないまま帰ったのに。



「おはよう。バレボー買ったか?」

「はよ。帰りに買うけど何?」

「見せてくれ。」

「それが目的か。」

「ええやん。見終わったら用済みやろ。」

「読み返すし、雑誌代浮かそうとするな。」



朝の挨拶と共に宮治にせびられた。
あたしがバレボーの発売日知ってたから
こいつ絶対買うなって思って借りるつもりだ。



「昨日見せたやん。おあいこや。」

「12月号私読んでるし!」

「1人で読むのも2人で読むのも安いもんやろ。」

「だったら割り勘にしてよ。」

「自分ケチやな。」

「自分だけ浮かそうとする人が何言ってんの。」



あたしの机に伏せて上目遣いに言われたって
例えイケメンだからって騙されない。
というかおたくの子なんだから
しっかりしつけて貰えますかバリに
角名くんにジロっと目を向けると
チベットスナギツネそっくりな顔は
軽く顔を横に振っていた。



「治はまだ楽だよ。」

「え、どういう意味?」

「ほんまそう思うわ。」



宮治本人もそう言って私の隣の
まだ空いている席に座った。
治は楽って宮侑のが問題児って事?
これのこれがさらに?困る。



「もうバレー関係無いのになんで買うん?」

「バレー好きだからに決まってるじゃん。」

「好きな選手おる?」

「……男子ならアドラーズの大鷹選手。
女子はブルーシャトルの瀬兎谷選手。」

「両方セッターやないか。」

「普通バレーやってない人はスパイカー見がちだけど、
良いトスがあってのスパイクでしょ?
実はセッターが凄いんだっていうのかっこいいじゃん!」



偉そうに言ってるけど、
セッターが好きになったの高校からなんだけどね。



「……どっかのアホが似たような事言っとったな。」

「?」

「今の聞いたら煩くなりそう。」

「え、何のこと?」

「今月はアドラーズ特集やもんな。
明日楽しみにしとるから。」

Σ「は!?貸すって一言も言ってないんだけど!」

「バレー好きのよしみだよ」

「角名くんも借りる気!?」



ちゃっかり角名くんも読む気満々だった。
あたし実はもう2人の都合の良いバレー好きなのでは?