馴染んで滲む







「おはよう。バレボー持ってきた?」

「……ん。」

「やった!」



朝練終わりだろうか、
バレー部は教室ギリギリに来る。
HRが終わると同時に宮治が寄ってきて
早速昨日話していたバレボー借りにきた。
あまりにもしつこいし、断ったらまたしつこそうなので
あたしは仕方なく読み終わった雑誌を持って来た。
宮治は嬉しそうな反応していた。子どもか。



「バレー部で回し読みしてええ?」

「そのつもりだったんでしょ?」

「分かっとるやん。」

「ぼろぼろにしないでよ?
今月気に入ってるんだから大鷹選手。」

「なんや顔か。」

「プラスアルファだから。」



宮治はパラパラと雑誌を読み始めた。
その横で角名くんも顔を覗かせてる。



「1年生とか買わないの?」

「1年に集ったら可哀想やろ。」

「先輩の圧力こわー。」

「転校して数日のあたしに集るのどうなの?(怒)」

「もうクラスメイトやん。」

「!」



宮治にサラッと言われてびっくりした。
転校生ってもっと周りの状況みて
居場所考えたり気を使ったりしそうなのに
もうクラスメイトと思ってくれるの?



「(めちゃくちゃ嬉しい…)」

「遥」

「!、(えと、確か…)美南ちゃん!」

「当たり!良かったらこっちこうへん?
治らと話してばっかやん。うちらとも話そ。
東京の話もっと聞きたいねん。」

「うん!」



あたしよりも背が低くて小柄な美南ちゃんに
腕を引っ張られて4.5人の女子グループに混ざった。
皆んな運動部っていうより文化系だったり
帰宅部が多いグループだった。



「遥、ほんまバレー好きなんやな。
雑誌も見してあげてたやろ?」

「嫌やったらあたしらも言ったるからなー?」

「ボロボロで帰って来たらお願いするかも(笑)」

「任せて!(笑)」

「なーなー、遥ってかわええやん?
正直東京で彼氏おった?今も続いてるん?」



なんでいきなりそういう話になるかな。



「あー、あたし可愛い?ありがとう(笑)
(逃げたいなー逃げれないかなーこれ…)」

「なーなー、気になるやんっ」

「彼氏はいないいないっ
毎日練習あったし、チームメイトも仲間って感じで
恋愛対象にならなかったから(笑)」

「ほんまー?」



良いから逃してください。
嘘ついてる自分も辛いし相手に悪い。
悪いって言ったって知られる事は無いだろうけど
気持ち的に辛いんだけど。



「モテそうなのにな?」

「なー?すでに学年で噂出とるし。」

「ほんと?じゃあ今のうちかなー?
結構ガサツだからそのうちボロが出るよ(笑)」

「あはは!そうなん!?」

「遥おもろいなー!」



これでいい。自虐すれば大抵ウケる。
そこは関東も関西も変わらないんだな。

宮治、あたしまだ馴染めてないと思うよ。