臆病者







「寂しい……」



東京都梟谷高校体育館。
昼間の授業が終わりこれから練習って時に
キャプテンである木兎光太郎は
体育館の床にベタッと張り付いていた。



「練習前からしょぼくれモード。」

「練習始まれば集中はするけどよ、
練習前と後ここ3日ずっとこれだよ(汗)」

「遥ちゃん褒めるの上手かったからなー」

「親の仕事の事だからしょうがない。」



同じ3年生の木葉と猿杙・小見は
見慣れた姿に呆れつつある。
ただそろそろ現実を受け止めて
バレーに集中して欲しいが正直な話である。



「こんちわーす。」

「おー、赤葦ー。」

「お疲れー」

「……木兎さんまたですか。」



察しのいい赤葦はすぐ状況に適応する。



「まただよ。」

「グループLINEからも抜けたから
メッセージ送れないって嘆いててさ。
俺らグループLINEしか知らなかったし。」

「向こうでは馴染んでんのか?
関西のノリってなんつーか難しくね?」

「…いえ、俺も連絡取ってないので。」

「は?」

「いやいやだってお前は…」

「そうそう付き合って…」

「別れました。というか振られました。」

Σ「「「は!!?(汗)」」」

Σ「あかーしフラれたの!!?(汗)」ガバッ



赤葦の淡々な話し方に3年生が動揺する。



「こんちわー。」

「おつかれー、何騒いでんの?」

「いやその!これは!(汗)」

「赤葦が遥ちゃんにフラれたんだって!(汗)」

「おい!(怒)」

Σ「「え!?(汗)」」



木兎がベラベラと話し木葉は肩を掴み止める。



「わ…別れたの!?(汗)」

「えー…そんな感じ全然しなかったのに…(汗)」

「だよな!?だよな!?(汗)」

「お前はもう黙れ!(汗)」

「そういう事なので、この話は終わりって事で。」

「なんで別れたの!?めっちゃ好きだったのに!」

「またお前は…!(怒)」

「はい。好きでした。
だからこれでも結構、まだキツイんで
木兎さん正直大人しくしていて欲しいです。」

「淡々と正直。」

「違くて!遥ちゃんが赤葦の事
すげー好きだったのになんで?」



木兎が平然と言うと
周りの3年生もそれは思うところがあり、
止めようとする手を緩めた。



「……俺が悪いんだと思います。」



赤葦はそう言って木兎達から離れ、
1人練習の準備を同期らとやり始めた。

その様子に木葉や小見は両脇で木兎を肘で軽くド突き、
もう余計な事は言うなと念押しをした。



理由なんて聞く暇もなく別れを告げられ、
一方的に自分の前から居なくなった。
それなのに遠くにいる彼女に連絡出来るほど
自分は強くなかったのだと気付いた。