好きなだけなのに







「遥ー、帰りカラオケ行かん?」

「いいの?行くー!」

「そういや、部活どうすんの?」

「このまま帰宅部でバイト始めようかなー」

「ええやん。お金あったら沢山遊べるし!」



放課後、美南ちゃんに誘われてカラオケ行く事になった。
まだこの辺の街も分かってなかったから
遊びに誘ってくれて結構嬉しい。
まだ明るい時間に家にいる事に慣れなくて
夕方や夜になる時間帯の方が安心する。



「生駒さん、また明日な。」

「うん。明日にはバレボー返る?」

「たぶん。侑次第やな。」



そう言って宮治は練習に行った。
角名くんも声は出さないけど
ヒラヒラと手を振ってたので
自分も似たように緩くひらひらと振った。



「遥ええなあ、治くんと話せて。」

「あの2人休み時間ほぼ寝とるでいつも。」

「え、今でも寝てない?」

「あれでも起きとるほうや(笑)」



授業中も絶対角名くん寝てる時あるけどな、
強豪校のバレー部はやっぱりハードなんだな。
それでも頭よかったりすんだよな。



「バレー知識あれば仲良うなれんのかな?」

「いやーニワカやと怒られそう。」

「……やっぱり宮兄弟ってモテるの?」



春高でも応援が凄いイメージの稲荷崎。
高スペックそうな2人の事だから
素朴な疑問を投げ掛けると、



「2人ともめっちゃモテるで。
第一印象は侑でその後は治がモテる。」

「侑はなー、口悪いもんな。」

「な?治くんの方が女子にも優しいねん。」

「へー、双子でも違うんだ。
元気とのんびりって感じなイメージだけど…。」

「元気とのんびりって(笑)」

「でも侑ファンの方が他校に多いで、
アイドルかっちゅうくらい
うちわ持ってキャーキャー言っとる。」

「そうなんだ…(木兎さんだったらめっちゃ喜ぶな。)」

「だからあんま距離近過ぎると
他所の女子から圧かかるかもやから気ぃつけやー」

「その為にあたしら声かけてんねん。」

「えー、ありがとうー」



たぶん一番厄介者だと思われてる気がする。
そういう皆んなも宮兄弟のファンで
仲良くあたしが気に入らないんじゃないかな。
考えすぎ…?そうだったらこの状況、
あたし結構惨めな気がするんだけど。







ーーーーー…*°




「お、もうバレボー発売か!見せて!」

「ええけどいつもみたいにシワにすんなよ。
これ借りもんやから。」

「誰や?角名か?」

「生駒さん。転校生の。」

「へー、ほんまバレー好きなんやなあ!」



そう言いながら侑は雑誌を受け取り
パラパラと見始める。
その後1ページ1ページじっくり見る癖なのだ。



「生駒さん、大鷹選手好きなんやて。」

「へー、俺と一緒やん。
ブラジルのリガルト・メシアもええけどな!」

「だから雑誌汚くしたら
二度と貸してくれへんから気をつけろよ。」

「おん!生駒ちゃんええ人やなぁ。」

「こんなにバレー好きやったら、
転校ほんま辛かったやろな。」

「なんでやねん。うちのバレー応援したらええやん。」

「んなわけあるかい。
転校しても東京応援するやろ。」

「それはあかんやん。
もう稲荷崎(ウチ)の子なんやから。」

「ウチの子ってなんやねん。」



双子の言い合いに角名と銀はまたかとなる。
そして部室に入ってきた3年生も
なんの話だと聞いたら、呆れて苦笑いをする。
いくら双子が言い合っても
応援するのは本人の自由やと
双子と長い付き合いとアランは諭した。

それでも聞かないのが双子なんだが。