犬ノ留守番








「燐ちゃん 今日は紅丸ちゃんはいないのかい?
今夜こそ付き合えって言っといてくれよ!」

「燐ちゃん!これ持ってっていきな!
良いのが入ったから紺ちゃん喜ぶよ!」

「ああ!伝えとく!
ありがとー!おじちゃん!」



2人がいない朝 燐子は町を見回っていると
話題には紅丸と紺炉が出てきて
あれよこれよと伝言や物を預かった。

半日も無いであろう留守番だが、
やはり2人がいないと締まらない浅草だ。
自分もつい最近一端の火消しになったが、
2人とはまだ程遠いとしみじみ思った。



「燐ちゃん 今日紅ちゃんと一緒じゃないのかい?」

「今日は紺炉中隊長と2人で野暮用で出払ってるよ
若の事だから直ぐ帰ってくると思うけど…」

「そうかい 今日は燐ちゃんだけ留守番かい?」

「そーなんだよ 2人に浅草任されたんだ!」

「燐ちゃんがいるなら安心だね」

「そう言って貰えるとありがたいけど
でもやっぱり皆んな若に弔って欲しいだろ
アタシはあくまでサポートとしてだよ」

「そんな事ないよ。櫻子ちゃんみたいに
燐ちゃんに弔って欲しい人もいるよ」

「それは嬉しいけど複雑な気分だな(汗)」

「皆んないつ焔ビトになっちまうか
こればっかりは分からないからねェ」

「………無くなっちまうのがありがたいんだがな」



燐子はポツリとつぶやいて
次は紅丸が見回る方に向かった。
先日2人で来たばかりだが、皆んな喜んでいた。

久々に書店の婆さんとこいこいをして大損した。

博打なんてやった事 紺炉に口が裂けても言えないが
ババアが賭けないこいこいなんて意味がないと言うから
仕方なくやったのに前はその理屈は通用しなかった。
ボケ防止の為に付き合ってるのに集られてる。
そんな事に最近薄々気がついてきた。



「あ!いたいた燐ちゃん!」

「どうした?」

「若と紺炉中隊長が帰ってきやした!」

「早!!」



昼過ぎに出かけてからまだ半刻も経っていない
早いことは予想してたがあまりにも早過ぎだった。










ーーーーーー…*°




「若ーっ!!」

「燐子か 変わりは無かったか?」

「大丈夫です!というか
予想はしてやしたけど早い帰りでしたね…
今日は全部見回る気満々だったのに」

「お前さん1人で見回ってたのか?
そりゃご苦労だったな」

「紺炉中隊長は大丈夫でしたか?」

「若が皇王相手に啖呵切るもんだから冷や冷やしたぜ(汗)」

「さすが若!」

「ケッ 伝道者とやらを始末しろとか
俺達に命令するから気に食わなかったんだよ
あの第二大隊長も名前間違えやがって」

「え!若の名前間違えやがったんすか!?(怒)」

「浅草の外の連中は名前が先に言うからな。
俺ら原国式とは色々と勝手が違う。」

「へー 呼び辛いっすね。」

「若ー!帰ったなら遊びやがれ!」

「燐子の野郎が全然遊んでくれなかったんだぜ!」



ヒカゲとヒナタも2人の留守番で退屈してたらしい。
2人で紅丸に飛び付いて両肩にのし掛かった。



「今帰ったんだ。燐子に遊んでもらえ。」

Σ「ええ!アタシ見回り途中なんすけど!?」

「俺が代わりに行ってやらあ」

「……若 どうせさっさと帰るなら
どうして今までみたいに無視しなかったんすか?」

「直接言わなきゃ分からねえアホな連中だからな」

「ふーん 皇国の連中はアホでめんどくさいんすね」

「お前…若の事を間に受けすぎるなよ(汗)
あながち間違っちゃいねえけどよ…」

「なら良いじゃねえすか」

「遊べ燐子ー!」

「無視すんな燐子ー!」



浅草しか知らない燐子は
ますます皇国に興味が無くなっていった。