| 「米屋先輩好きです、付き合ってください!」 前方にボーダー1のイケメン、米屋先輩が見えたので凄まじい勢いで体当たりをしながら叫んだ。隣に弾バカならぬお邪魔虫がいたがそいつは無視だ。突然現れ告白をしてきた私に米屋先輩は慌てることなく「いやいや、落ち着けって」となぜか宥めてくる。 今日もつれない米屋先輩。だがそこがいい。障害のある恋ほど燃えるというものだ。 「ならば先輩の決めゼリフ、『と、思うじゃん?』を録音させてください!お願いします!さあ!早く!」 「おい、だから落ち着けって」 「無理です!だって最近聞いてないんですよ!今までは事あるごとに言ってたのに!なんで最近は言わないんですか!」 私は欲求不満なのに!そう訴えると米屋先輩はなぜか複雑そうな顔をした。 何だその表情は。もしかして、恥ずかしいのか?ついに恥ずかしくなっちゃったのか?確かに、私だったら相手をハメる度に『と、思うじゃん?』とか言うのは耐えられない。羞恥心に胸が押し潰される。でも相手は米屋先輩だ。存在自体恥ずかしさの塊(褒め言葉)なんだから、今更気にすることもないだろうに。某実力派エリートの『俺のサイドエフェクトがそう言ってる』発言よりマトモだし。 一人で悶々と考え込んでいると、今度は弾バカが口を開いた。まだいたのか。空気を読んでどこか行けよ。 「名前、マジで槍バカのこと好きなのか?」 「当たり前じゃないですか私が冗談でこんなこと言うと思ってるんですかアホなんですか」 後、気安く名前で呼ぶんじゃねえ、なんて思ったけどそれはどうにか押し留めた。 悲しいことながら、出水先輩は私の師匠なのだ。ある程度の敬意は見せないと後々面倒くさい。ちなみに、天才たる所以かこの人の教え方は凡人の私には理解出来ないのでぶっちゃけ独学だと言っても過言ではないのだが。 嘘だろ、なんて呟きながら、出水先輩はなぜか急に押し黙った米屋先輩に視線を移した。嘘じゃねえよ。私のこの純情たる想いを否定する気か弾バカ野郎。 イラついた私は米屋先輩の魅力を語るため必死にまくし立てた。 「出水先輩は馬鹿なんですか!?黒トリガーめぐって嵐山隊と戦った時と羊みたいな角生やした変態と戦った時の米屋先輩の台詞ちゃんと聞いてました!?『と、思うじゃん?』ですよひゃっはー!ああああやばいかっこいい、米屋先輩もう一回お願いします」 「え、何お前槍バカのそんなとこが好きなの?」 間抜けヅラを晒す出水先輩の言葉に頷く。 「はい。槍バカのクセに敵の裏の裏をかくその姿勢に惚れました」 頭が悪いクセに戦闘では頼りになるなんてイケメンすぎる。 「米屋先輩なら例え槍バカでも死んだ魚の目をしててもおデコをこれでもかと言うほど主張していても好きです!」 「…それ褒めてんの?」 「当たり前です!」 私の一世一代の愛の告白をことごとく否定してくる出水先輩はこの際無視だ。 キリッ、と米屋先輩の方に向き直る。目を合わせると、米屋先輩は引き攣った顔で視線を横に流した。ああ、引いた顔も男前だ。 「あー、名前。取り敢えず、」 何か言いかける米屋先輩。私の愛の力を持ってすれば米屋先輩の言いたいことなんて余裕でわかる。私と模擬戦したいんですね?わかりますよ米屋先輩。男なら拳で戦い愛を奪えと言うことなのですね。さすがはイケメン、言うこともイケメンそのものだ。 私は大きく頷いた。 「…わかりました!取り敢えず今から2人で模擬戦しましょう!それで嫌でも『と、思うじゃん?』と言ってもらいます!いや、むしろお互いに裏の裏をかきながら言い合ったほうが燃えますかね?」 言うやいなや、先輩の腕をガシッと掴みズルズルと引っ張り始めた。 「ちょっ!待てって!何も燃えねえから!」 「善は急げです!さあ!」 米屋先輩、焦った顔も素敵。 あ、そうだ。 「私が勝ったら米屋先輩が私と付き合う、米屋先輩が勝ったら私が米屋先輩と付き合ってことで」 そうニッコリと笑いながら囁くと、米屋先輩は「いや、それどっちも一緒だろ!?」と悲鳴のように叫んだ。あ、これは可愛い。必死に腕から抜け出そうとする先輩を、私はゴリラの如く力強い腕力で抑え込んだ。これが火事場の馬鹿力というやつですな。ほっほっほっ いやあ、これで長年の片想いが実るなんて幸せだ。 「え、これマジでピンチじゃね?」なんて焦りまくっている米屋先輩を天女の如く微笑みで見下ろしながら私は思った。 (死んでも離してなんかやらない) 後には、やる気満々の後輩にいやいや引っ張られていく米屋を見ながら爆笑する出水だけが残されたのであった。 |