| 「佐鳥ってさ、やっぱりそのウザったいキャラがダメなんだと思う」 「え、何その突然のダメ出し!しかもやっぱりって、ダメなこと前提ですか!?」 ほらほら、そういう所だよ、佐鳥。いちいちリアクションが大きいところとか、まさに2.9枚目。 これが風間さんだったらもっとイケメンらしい切り返しができただろうに。 今日は珍しく広報の仕事も防衛任務もない、暇な1日だった。 米屋や出水なら『模擬戦やろうぜ!ヒャッハー!』なんて騒ぐだろうが、私はあの馬鹿たちとは違いそこまで戦闘狂ではない。 隊室で漫画を読んだりゲームをしたり、ゴロゴロしながら時間を潰していた。 ああ、仕事がないって幸せ。私だってまだ高校生なのだ、たまにはボーダーであることを忘れて、ただの学生として青春をエンジョイしたい。 もちろん、学生の青春の大半をしめるであろう、担任からお前鬼畜だろ、と思わずツッコミを入れてしまうほど出された課題には一つも手を出していない状況であった。 いやまあ、ボーダーですからね、嵐山隊ですからね、忙しいんです本当に。 担任に怒られたらそう言い訳すればまあどうにかなるだろうと、高を括り優雅な休日を過ごしていた私だったが、さすがに1日中遊んでいるとやることもなくなってくる。 課題を終わらせろよ、という話だが、提出期限きっちりに課題を出すのは私のポリシーに反する行為だ。 そこで、暇つぶしに佐鳥をからかって遊ぼうと考えたのである。 からかうと言っても私が先ほど佐鳥に告げた言葉は紛うことなき本心だし、たまにはシビアな意見を伝えたほうが佐鳥のためになるだろう。 そう思い、私は心を鬼にして佐鳥にダメ出ししまくることを決めた。 正直心苦しいが、これも愛する後輩のためなのだ。 「いや、先輩はただ俺でストレス解消したいだけじゃん!」 「ストレス?そんなもの人生を謳歌している私にあるわけないでしょ」 「さっき廊下でC級隊員の首チョンパしたの先輩!」 「ああ、あれね。相手が戦闘体で良かったよね、本当に。危うく殺人事件になるところだった」 「え、あれって確認せずに斬ってたんですか!?マジで何やってんの!?」 「私は自分を抑えきれなかった」 仕方ないじゃん。ゴロゴロしてたら、廊下から嵐山隊はマスコット隊やらなんちゃら悪口言う声が聞こえたんだから。 私が斬らないで誰が斬る。 「はあ…あの後鬼怒田さんと東さんに『ちゃんと面倒見ろ』ってこってり絞られたの俺なんですからね…」 「へー、そうだったんだ。ご苦労ご苦労」 「罪悪感の欠けらも無い!」 げんなりとした顔の佐鳥は、やっぱりどこからどう見ても安定の2.9枚目だった。なぜだろうか。 別に顔は悪くないはずなのに。これが、佐鳥が佐鳥たる所以なのか。 「いやー、なんていうか、佐鳥って安っぽいよね」 「俺の話聞いてました!?」 わかってるわかってる。C級隊員が私達をマスコット隊とか抜かしてた話でしょ? 大丈夫、佐鳥はマスコットにすらなれないから。 半泣きで訴えてくる佐鳥を慰めるため、激励の言葉をかければ「もう俺この人と同じ隊なんて嫌だ!」と叫ばれた。解せぬ。 最近の男子高校生って、何を考えてるのか全くわからない。 一つ年下というだけで、こんなにも時代が違うものなのか。お姉さんはお手上げですよ。 ああだこうだと騒ぐ佐鳥が面倒くさかったので、仕方なく話題を変えることにした。 「そう言えば、一昨日届いた『どうして佐鳥は嵐山隊にいるんですか?』って書かれたこのファンレターなんだけど、」 「それもはやファンレターじゃない!」 「さっきからうるさいな、お前。語尾にビックリマーク付けなきゃ喋れないのか」 オーバーリアクションやめていじられキャラみたいなところがなくなれば、もう少し人気も出るだろうに。あ、それと女の子大好きー!ってところも直したほうがいい。 とっきーみたいにクールに行こうぜ。 「………俺、そんな手紙が来てたこと知らなかったんですけど」 「いや、嵐山さんがね、『これを見たら賢が傷つくから、このことは俺たちの胸にしまっておこう』って言ってたから」 「…何だろう、その優しさが痛い」 佐鳥は予想以上に大きな打撃を受けているようだった。 可哀想な佐鳥。 「まあ、元気出せって」 「何この人ムカつくな!元はと言えば名前先輩のせいですからね!」 佐鳥の肩に手を置きぐっと親指を立てれば、まさかの逆ギレをされてしまった。 いつもだったら即刻首チョンパの刑だが、今にもマジ泣きしそうな様子だったのでやめておく。 ここは私が大人になろう。 「大丈夫だって佐鳥。ほら、このファンレターなんて、『佐鳥って誰なんですか?もしかして、この間とっきーと雑誌に載っていたあの可愛い猫ちゃんの名前ですか?』だってさ。良かったじゃん!」 「いや、全然大丈夫じゃないですよ!え、まさか俺って猫よりも知名度低いの?マジで?」 本気で落ち込む佐鳥に私の良心が痛むが、甘やかすのは良くない。 たまにはスパルタ教育も大事だ。 「ほら、こんな時こそ『佐鳥もいますよ〜』って言わないと!本当、面白味にかける奴だな」 「どう考えても無理でしょ!そもそも、嵐山さんは言うなって言ってたんですよね?それなのに何でわざわざ佐鳥に教えたんですか!」 「何を言うか。私は佐鳥のためを思って…」 「本音は?」 「面白いから」 「…名前先輩って、本当にいい性格してますよね」 諦めたのか、佐鳥は小さく息を吐いて呟いた。 まるで悟りを開いたような表情だ。…佐鳥だけに。 うわ、全然面白くない。さすがは佐鳥。 こいつにはやる事なす事つまらなくなる呪いでもかかっているのかもしれない。 「もう、今日は帰ります…」 残りHP1の佐鳥は、まるで死にかけの蝉のよう。 いや、蝉のほうがまだマシかもしれない。彼らは最期の最期まで力を振り絞って飛ぶのだから。 佐鳥にもその気力を分けて欲しいくらいである。 蝉にすら負ける佐鳥は、虚ろな瞳で「名前先輩なんて嫌いだ…」とひたすら繰り返していた。 怖い。このままでは呪い殺されるやもしれぬ。 「さ、佐鳥落ち着いて!ほら、私は佐鳥のこと大好きだからさ!」 自分の行く末が心配になった私は、どうにかこうにか佐鳥の機嫌を取る作戦に出た。 今回ばかりは冷たくあしらわれるかとも思ったが、佐鳥はしばらくの間パチパチと目をしばたかせた後、ボッ、と顔を赤くした。 いやはや、予想外。 「名前先輩!佐鳥も名前先輩のこと大好きですよー!」 「あ、うん」 ガバッとものすごい勢いで抱きつかれ、身動きが取れなくなる。 もし佐鳥にしっぽがあるならば、確実にブンブンと振り回しているだろう。 きゅん。 え、いやいや、ちょっと待って。 ありえないから。別に佐鳥可愛くないし。 子犬っぽいな、とは思うけど私は猫派だ。 落ち着け、自分。 しかし、 これはまずい。非常にまずい。 「佐鳥、今すぐ離せ。1秒以内に。はい、いーち」 ドゴォ!と壁が崩れる音がして、辺りは一瞬噴煙に包まれた。 「ちょっと、名前先輩何してんの!?」 「佐鳥うるさい、そこから一歩でも近づいたら斬る」 「いや俺生身なんですけど!」 辺りを見渡してゴホゴホと咳き込みながら「うわ、これはやばい…」と放心する佐鳥を睨みつける。 いや、うん。私もさすがに今回ばかりはやばいと思う。 思わずトリガー起動して、作戦室の壁破壊しちゃったとかマジでやばいわ。 鬼怒田さんにぶっ飛ばされるわ。あああ、嵐山さんにも迷惑がかかってしまう。 しかし、そんな思いは次の佐鳥の発言で吹っ飛んだ。 「あれ、先輩顔が赤くなって…イテッ」 「はい動いたー。じゃあ斬るよー」 「ちょ、動いてないですって!」 赤くなってるって?全部お前のせいだろうが! 佐鳥は理不尽な怒りをぶつけられることにわけがわからない、という顔をしていた。ふざけるな。 わけがわからないのはこっちだ。 なんで佐鳥相手にきゅんきゅんしないといけないのありえない。 先ほど首チョンパしたC級隊員の言葉を思い出す。 『なあなあ、嵐山隊ってさ、』 『ああ、マスコット隊だろ?』 『そうそう、なんで佐鳥なんかがいるんだろうな』 『確かに。佐鳥ってすげえけど、なんか普通だもんな』 『何しろ2.9枚目だし』 ぎゃぁぁぁぁぁ!ちょ、今考えてみれば、これでキレて首チョンパしたって、まるで私が佐鳥のこと好きみたいじゃん! そんなことない。そんなことない。 私があいつらの発言を聞いてすごくモヤモヤしたのはマスコット隊って言われたからだ。 佐鳥の悪口言われたからじゃない。絶対。 「さ、佐鳥!私は別に佐鳥のことなんて好きじゃないからね!」 「えー。でも佐鳥は名前先輩のこと好きですよー?」 「死にさらせ!」 「何で!?」 ふざけた発言に孤月を振ると、ドカッと更にひどい音をたてて無事だった側の壁が崩れた。 「名前先輩、落ち着いて!」 「無理!マジで無理!死にたい!消え去りたい!」 私の攻撃を間一髪でよけた佐鳥が叫ぶが、そんなことできたらもうとっくの昔にやってるわ。 ドキドキと鳴る心臓の音はいつになっても止まらない。 「し、心臓が止まらない…!」 「いや心臓止まったら死んじゃうから!」 「さ、佐鳥のせいで死にそう」 「え!」 心臓に手を当てポツリと呟くと、先ほどまで真っ青な顔をしていた佐鳥は、間抜けな表情をしたまま固まった。 「ちょっと、何で佐鳥まで顔赤くなってんの!?」 目の前で孤月を振り回されてるのに顔を赤らめるとかお前はドMか。ドMなのか。 「違いますよ!名前先輩がまるで佐鳥のこと好きみたいなこと」 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」 「うわ!ちょ、先輩今かすった!俺のほうが先に死んじゃうから!」 「もういっそのこと誰か殺してくれ!」 「ダメですよ!名前先輩が死んじゃったら佐鳥は、」 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」 「何で!?」 佐鳥と私の攻防戦は、鬼怒田さんが何事かと怒鳴り込んで来るまで続いた。 「鬼怒田さん、全ては僕がやったことです!責任は僕にあります!」 「佐鳥…(きゅん)」 「当たり前だ!」 「あれぇ、これが正解じゃないの?」 title by たとえば僕が |