「ずわざーーーん!」
「あ?何だよ。うるせーって」

自分の名前を呼びながらビービーと泣く名前に、顔をしかめる。
おい、それ女子のする顔じゃねえだろ。
泣きすぎて涙やら鼻水やらでびしょびしょになった名前の顔は、正直見るに堪えないほどで、諏訪はドン引きした。

しかし、今回ばかりは自分が悪いとわかっているので頭をかきながら素直に謝る。

「悪かったな」
「ほ、ホントですよ!諏訪さんが死んじゃうかと思ったんですから!」
「死んでねえんだからもういいだろ」
「良くないです!諏訪さんが死にかけた時、私も死ぬかと思いました!」
「何だそりゃ」
「諏訪さんが死んだら私生きていけないですよ!このあんぽんたん!戦闘体のくせにカッコつけて煙草スパスパしてるから罰が当たったんです!」
「あー、だから悪かったって」

最後のほうに余計な一言があった気がするが、そこは大人になって流してやる。

大規模侵攻でキューブ化された諏訪を心配した名前は、戦いが終わるなり諏訪隊の隊室へと駆け込んで来た。それはもう、血相を変えて。

諏訪自身、死にかけたつもりは毛頭ない。ただキューブにされただけで、今でもそこまで危機感はないのだが、自分に異常なほど懐いている名前にここまで心配をかけたのかと、少しだけばつが悪かった。

「おい、いい加減泣きやめ」
「だって止まらないもん!」
「泣くほどのことじゃねえだろ」
「これは喜びの涙ですよ!諏訪さんが生きてて良かった、っていう」
「あー、ハイハイ」

どうしたものか。とりあえずヒックヒック泣き続ける名前を抱きしめ、あやすように背中をさすると、「諏訪さん煙草臭い」なんて文句を言いながら名前はギュッと抱きついてきた。

たまには可愛いとこがあるじゃねえか、なんて呑気に考えてしばらくその体勢のままでいたが、名前が顔を押し付けている自分の胸の辺りからズーズーと音が鳴り、諏訪は急いで体を離した。

「おい!人の服で鼻水かんでんじゃねーよ!」
「あ、ごめんなさい、つい」

つい、じゃない。諏訪の服は名前の涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。うわ、汚ねえ。

文句を言おうと口を開きかけたが、えへへ、と笑う名前の間抜けな顔に毒気を抜かれる。


先ほどの涙が嘘のように晴れ晴れと笑う名前に、たまにはこういうのも悪くねえか、と思った。
もしこの場に堤や笹森がいたら、諏訪の表情を見て、『うわ、諏訪さん末期だな』なんて感想を抱いたことだろう。

無自覚とは怖いものだ。

「諏訪さんは私が守ります!」
「お前俺より弱いじゃねえか」
「大事なのは気合いです!」
「そーかよ」

鼻息を荒くし勢いよく宣言する可愛い後輩に、諏訪は照れくさそうに笑った。


title by たとえば僕が