| 「タ、タスケテー!」 私は死に物狂いで走っていた。え、これ以上速く走ることなんて不可能じゃね?世界記録並じゃね?と頭の中でツッコミを入れてしまうぐらい走りまくっていた。 なぜかというと、文字通り今にもお陀仏になりそうな状況だからである。私は現在進行形でシャーシャー言ってる気味の悪いネイバーに追いかけられているのだ。 ちょ、やばいって!ボーダーまだ!? 死にたくないよ、まだ20と数年しか生きてないのに! 就職せずに親のスネをかじることで生計を経てている私は、ほんの30分前までは実家でゴロゴロと漫画を読んでゲラゲラ笑っていたはずなのに。 どうしてこんな目に合わなければいけないのか。 「あんたはいつになったら働くの!」とキレた母親に家を追い出されたのが運の尽きだった。 走りすぎて息が荒い。運動不足のせいで既に死にかけである。ネイバーにやられるより先に疲労で死ぬってのはどうなのだろう。 いや、でも普通に死ぬよりはかっこいいかもしれない。我が人生に一遍の悔いなし!とかドヤ顔で言いながら死んでいくのが私の夢だ。 はあはあと乱れる息を整えながらチラリと後ろを見やる。 ここまで来たらさすがにネイバーも諦めただろうと淡い期待を抱きながら立ち止まった。 『シャアアアアア』 「ぎぃゃぁぁぁぁ!」 甘かった。振り返ると目の前にネイバーがいた。 私のパーソナルスペースなど関係なしに近づいてくる。 やばい腰抜けた。あ、これ終わったわ。 まさかニートのまま死ぬなんて。明日の朝刊に『無職24歳女性、ネイバーにより死亡』、とか書かれたらどうしよう。最悪だ。 とりあえず名前が載らないことだけ祈ろう。 ああ、ごめんなさいお母さんお父さん。最後までロクに稼ぎもないニートの娘でごめん。今まで育ててくれてありがとう。 弟と妹よ、いつも虫ケラ以下のゴミでも見るかのような目で蔑んでくるのはお姉ちゃん正直辛かったよ。家族がニートだと知られたくないのか、学校で私の存在をなかったことにしてたのも心苦しかったよ。 胸の内で家族への別れを思い、ゆっくり目を閉じた。 もしかして私がいないほうが一家安泰でいいんじゃね?と少し考えてしまってものすごく悲しくなった。 あ、やばいちょっと涙出てきた。大丈夫だ、安心しろ私。この世にいらない命なんて存在しないんだから。 どんな人でも生きる価値があるし、ほら、私が就職しないおかげて誰かが働けてるなら願ったり叶ったりじゃん。 うんうん、生きててよかった。もうすぐ殺されてしまうけれども。 しかし、どれだけ経ってもネイバーは行動を起こさなかった。 おい、どれだけ待たせる気だ。やるならサッとしてくれよ、ドキドキして動悸が大変なことになってるよ。 恐る恐る目を開ける。私は目の前の光景に目を見開いた。 あれ?どういうこった。驚いたことに、先ほどまで私を狙っていたネイバーは、バラバラに破壊され元の面影もない無残な姿になっている。 なにこれ。どういうことだ。 もしかして、私助かったの?マジかよ!さすが私だ。日頃の行いって大事だよね。神様は本当に存在していたのか。 ヒャッハー!なんてふ〇っしーばりに叫びそうになり、思わず口をつぐむ。 え、この人誰。 「お姉さん大丈夫?」 サングラスをかけた変な男が目の前に立っていた。 |