「レイジさん!遅かったじゃないですかー!」

修君はいい子だけど烏丸が生意気すぎて相手をするのが辛かった。
ようやく現れた念願のレイジさんに勢い余って抱きつく。

ああ、この落ち着いた筋肉最高。どうやらこの落ち着いた筋肉は人を落ち着かせる作用もあるらしく、色々と高ぶっていたマイハートはだいぶ平常心を取り戻した。

「何かあったのか?」

私がいることに少し驚いたようだけど、いつもと変わらず冷静に聞くレイジさん。そんなあなたも素敵です。

でも言外に"また"何かあったのかという含みを持たせてくるのはやめてください。最近会ってないから寂しかったんですよ、うんうん。そういうことにしておこう。


「今日泊まってもいいですか?」
「…別に構わないが」
「よっしゃーありがとうございまーす!」

うぇーいお泊り確定!私はたまに嫌なことがあった時(主に餅川関連)、こうして玉狛支部に泊まらせてもらっている。
本部の戦闘馬鹿共といるよりここにいたほうが絶対に癒されるし。
だって、陽太郎も同い年の宇佐美と小南も、そして我らが筋肉レイジさんまでもいるのだ。癒されないわけがない。
烏丸はもちろん論外である。

あっ、ちょっとレイジさん、さりげなく私を引き剥がすのやめてくださいひどいです。

「あれ?名前、来てたんだー」
「お邪魔しております」

次にやって来たのはちょっとおかしな有能メガネ、宇佐美だった。
相変わらず忙しそうだ。


「そう言えば、千佳ちゃん達と会うの初めてじゃない?」
「千佳ちゃん?」

さっきも修君から聞いた名前だ。宇佐美の言葉にどこにいるのだろうと見渡せば、なんと、落ち着いた筋肉の後ろに小さくて見た目小学生のすごく可愛い女の子が隠れていた。
…何ていうか、レイジさんといるとやばい。レイジさん犯罪者に見えるわ。

「あ、あの、雨取千佳です…」

何だこの小動物みたいな子は!天使オーラが体中から溢れている。
玉狛支部マジ天使。本部にはこんな可愛らしい女の子はいない。みんな見た目は可愛いけど…いや、これ以上は言わないでおこう。私が殺られる。

「名字名前です!千佳ちゃんもスナイパーだよね?よろしく!」

千佳ちゃんの可愛らしい小さな手を握ってぶんぶん振り回す。びっくりした顔も可愛いな、この子。

「先輩、あんまりやるとドン引きされますよ」
「うるさいとりまるさっさと帰れハゲ」

まだいたのかお前!お前だけはこの癒しの空間に不必要な存在だ。今すぐ立ち去れ!

「レイジさん、実は名前先輩、」
「うわーごめんなさい許してください烏丸君!」

私の暴言にムカついたのか、レイジさんに何かを暴露しようとする烏丸を必死に止める。

マジごめんって。気にする必要ないよ、君は髪もさもさしてハゲとはかけ離れてるから。


「夕飯何がいいか?」
「肉で!」
「……………」
「……………」
「ちょっとその顔は何ですか2人とも!」

素直に要望を伝えただけなのにこの仕打ち。何が食べたいか聞いてきたのはレイジさんじゃん。
なぜ烏丸と二人で残念なものを見るかのような眼差しで見つめてくる。

肉か!?肉が悪いのか。でも悲しいことに私の好物は肉なのだ。お願いだから、『好きな食べものはいちご』なんて可愛く言う女の子と一緒にしないでほしい。

「先輩は、中身を変えた方がいいと思いますよ」
「ああ!?」

何だとコラ、喧嘩売ってんのか烏丸。

「ああ…口が悪いのも直したほうがいいぞ」
「レイジさんまで!?」

なんてこった、今日は厄日か?烏丸はともかく、レイジさんにまでダメ出しされるとは。

落ち込む私をよそに、修君と千佳ちゃんは、騒ぐ私達を驚いた目で見ながら、「太刀川隊のスナイパーらしい」「えっ、そうなんだ…」という可愛らしい会話をしていた。なごむ。


しかし、この癒しの空間も束の間、やって来た小南に「名前、また来たの!?どうせ太刀川と喧嘩でもしたんでしょ!」と叫ばれ(どうでもいいけど小南が餅川を呼び捨てにしてることが地味に気になる)、そんなことないと全力で否定すれば初めてお目にかかった白髪の少年(多分例の黒トリガー)に「おまえ、つまんないウソつくね」と罵られ、散々だった。

癒されに来たはずなのに、私の疲れは倍増だ。

迅さんが来なかったことと、レイジさんの手料理が美味しかったことだけが救いである。