「オッス!オラ名前!小型かつ高性能?強そうだな、オラわくわくすっぞ!」
「頭は大丈夫か?」

本部のロビーで一人寂しく牛乳をグビグビと飲んでいる風間さんに出会い頭そう挨拶すれば、無表情で淡々と返されてしまった。

何ということだ。これだから冗談の通じない人は困る。ここはちょっとクスッと笑うところでしょ、どうなってるんだ21歳男子。どうしてこんなに愛想がない子に育ってしまったのか。お母さんは悲しいわ。

風間さんはもう少し表情豊かに生きるべきだと思う。クール気取ってると後々大変だから。三輪みたいにどうでもいいところでボケかまさなきゃいけないようになっちゃうから。

いやはや、あの子は本当に可哀想な子だ。どう考えてもシスコン(シリアス)なんて呼ばれるキャラじゃないはずなのに。まあ三輪はボーダーの中でも色々と異彩を放っているから仕方がないことなのかもしれないけど。ああ、でもやっぱり不憫だわ。

「何の用だ」
「え〜、ちょっと呼んでみただけ☆なーんて…ごめんなさい嘘だから牛乳パック握りつぶさないでください反省してます」

軽くボケただけでこの始末である。牛乳パックはまるで親の敵のように押し潰され悲惨な状況に陥っていた。風間さんはもう少しツッコミ術というものを学んだ方が良いのではないだろうか。
でもこの人冷静キャラの癖に案外ボケ寄りだからな。仕方ないか。冗談が通じない人って大変だ。


「いやー、昨日私を家まで連れて帰ってくれたの風間さんでしょ?酔ってたから全く記憶にないんですけど、色々とお世話になったみたいで。仕方がないのでお礼を言ってやろうかと」
「ずいぶんと上から目線だな」
「あ、やっぱりわかりました?実は今日ヒール履いてるんですよ〜」
「そういうことじゃない」
「イタッ!ちょ、冗談だから!ジャパニーズジョークですよ!頭!頭割れる!」

凄まじい握力で頭を鷲掴みにされ、心なしか頭蓋骨がミシミシと音を立てている気がする。マジで痛いわ。チビのクセにさすがは小型かつ高性能といったところか、風間さんにも一般男性並みの握力はあるらしい。


「これに懲りたらしばらく酒は控えろ」
「あ、そうだ。昨日のお礼ってことで、今日は私が奢りますよ。いつもの居酒屋で」
「……頼むから話を聞け」

いやいや、迷惑をかけた以上、お礼をせねば気が済まない。借りた借りを返すのは大人の常識だ。
なんてったって、もう二十歳ですから。


昨日、酔っ払って風間さんに背負われていた私は、そのままグースカ寝てしまっていたようで、朝起きるとそこは自室のベッドの上だった。

これには正直安堵した。良かった、目が覚めたら変なホテルにいたとか、隣で風間さんが寝ていたとか、そういうおぞましいことが起きなくて。
さすが紳士・風間である。

相手が太刀川だったらこうはなっていなかっただろう。あいつは歩く公然わいせつ罪だ、警戒するに越したことはない。


「また俺に介抱させる気か」
「今日は大丈夫ですって」

どれだけ信用がないんだ。さすがの私でも昨日の二の舞を演じるはずがない。ちゃんとセーブするし。昨日みたいに気分が悪くなるまで飲むわけがないじゃないか。全く、風間さんは心配症だ。

「奢ってやるっつってんだから、人の行為は素直に受け入れた方が身のためですよ?ね、行きましょうよ風間さん」
「太刀川も呼ぶなら行く」
「え、それは嫌なんですけど」

何だ何だ、風間さん太刀川のことそんなに好きだったの?マジかよ。衝撃の事実を知ってしまった。
あいつが来たら行くってか。どこの恋する乙女だよ。正直ドン引きである。

「風間さんって、もしかしてホ」
「太刀川がいたらお前は酒をセーブするだろう。だからだ」
「いや、確かにそうですけど。ところで、風間さんってホ」
「殴られたいのか」
「いえいえ、まさかそんな」

『太刀川君も呼んで〜』発言により風間さんにホの字疑惑がかかったが、どうやら全力で否定するところをみると違うらしい。

ダンガー太刀川がいれば、私が自身の貞操の危機を感じて、フラフラになるまで飲まないだろう、という魂胆か。なるほどなるほど、太刀川の前で酔っ払ったりなんかしたらペロッと食われちゃうからね、あいつ本当に節操なしだから。

あいつと飲むとか何の罰ゲームだよ、と文句を言いたいところだが仕方ない。ここは風間さんのために私が大人になるべきだろう。

「わかりました。太刀川も連れて行きますよ」

渋々と頷くと風間さんも納得したのか、集まる時間を決めると、これから防衛任務らしく隊室へと戻っていった。


いやあ、今日も風間さんと飲めるなんて楽しみだ。
何だかんだ言って風間さんは優しいから愚痴聞いてくれるし、ベビーフェイスでモグモグご飯食べてるところは見ていて和むし、私の心のオアシスである。太刀川という邪魔者がいることは許せないけれど。


去り際に「そのヒールは脱いで来い」と言われ、少しだけ笑ってしまった。何だ、やっぱり気にしてるんだ。