「はい、今日の嵐山隊の議題はズバリ、『なぜとっきーは人気がないのか』です!」

ホワイトボードの横に立ち高らかに宣言する私に、我らが嵐山隊の面々は驚いたような、というかギョッとしたような顔を向けた。
あの嵐山さんでさえ焦った顔でオロオロしている。これは重大事件だ。
いつも通りなのは眠たげな目でホワイトボードを見つめるとっきーだけか。さすがとっきー。
どんな時も冷静さを欠かないその姿勢、賞賛に値する。

「い、いやいや名前、今日とっきー誕生日だから!わざわざ今そんな話しなくても!」
「お、何か意見がおありかね。人気投票17位の佐鳥君」
「だからやめろって!」

そう悲痛な声を漏らすと佐鳥は半泣きで机に顔を伏せた。
どうやら私は佐鳥の古傷を抉ってしまったらしい。
だが佐鳥なんてどうでもいい。問題はとっきーなのだ。

「ねえ、佐鳥は自分が17位だと知ったときどう思った?まさか良かった、なんて思うわけないよね?だって17位だもん。佐鳥よりも出番が少ない遥ちゃんにも負けてるんだよ?おかしくね?大丈夫なの?必殺ツイン狙撃なんて馬鹿げたことやってるから顔窓になっちゃったんじゃないの?」
「…すみませんでした」
「まあそれはどうでもいいんだけど」
「どうでもいい!?散々人のことディスっといてよく言うな!」

吠える佐鳥を無視して私は勢いよくホワイトボードを叩く。

「とっきーが!どうして私のとっきーが21位なの!?」
ありえない。これだけ男気満載のとっきーがレプリカ如きに負けるなんて許せない。

「とっきーは炊飯器以下の男ということか!」
「名前、わかったから落ち着け」
「10位は黙っといてください」
「…はい」

ギロりと睨みつければ、嵐山さんはチワワのように縮こまり大人しくなった。隊長の威厳なんてあったもんじゃない。

「だいたい嵐山さんが10位ってことも許せないんですよ!その変な髪型でよく票もらえましたね!」
「……………」
「そもそもボーダーの顔って呼ばれてるんだから、1位取らなきゃダメなんじゃないんですか?何してるんですか無駄にテレビとか出て広報の仕事やってるんだからこんな時ぐらい本領発揮してくださいよ、これだから嵐山隊はマスコットチームとか言われるんですよ」
「…すまん」

涙目になった嵐山さんに、善良なる心の持ち主である私は少しだけ良心が傷んだけれど、そんなことは気にしていられない。
今日はとっきーのためを思って心を鬼にすると決めたのだ。

「名前先輩、そんなこと言ってたら嵐山さんのファンに刺されますよ」
「うるさいアホ木虎」
「アホ!?」

木虎の忠告も一刀両断する。とっきーのためなら私は刺されたっていいんだ。
愛するとっきーのためなら、何だって出来るから。


「いや、それと俺たちディスること関係ある?」

冷静な佐鳥のツッコミも、愛にひた走る私には雑音にしか聞こえない。

「とっきーは嵐山さんとのコンビネーションもバッチリだし、アホ木虎のフォローも完璧だし、面倒見もいいし、出来る男感満載なのに!どうして嵐山隊でドベなの!佐鳥に負けるなんて許せない!」
「いちいち佐鳥を巻き込まないで」
「何が悪いの!?キノコヘアーが悪いの!?それとも黒トリガー争奪戦の時途中退場しちゃったから!?でもそれは全部木虎のせいだよね!本当だったらとっきーがクソ冬真さんの首チョンパしてたはずだよね!」
「名前マジで落ち着いて、木虎超落ち込んでるから、もう涙目になっちゃってるから」
「これが落ち着いてられるか!」

私がどんな気持ちで人気投票の結果を見たかお前らにわかるのか。とっきーが1位だと信じきっていた私は、ワクワクしながらとっきーの姿を探したものだ。
それなのに、実際はただ小さく『21位時枝充』と文字が並んでいるだけだった。
佐鳥でさえ顔窓扱いだったけどイラスト付きだったからね。
あの時は本気で発狂したものだ。
とっきーが止めてくれなければとっきーより順位が上の20人を全員殺るところだった。

だいたい鳥丸とか小南先輩の順位が高いことが解せないんだけど。確かに二人とも顔整ってるし玉狛支部だけどさ、黒トリガー争奪戦の時あの人たち何もやってないからね、私達嵐山隊と迅さんが必死に戦ってる中楽しくトリガー決めてたからね。

別にいいけどさ。もう少しとっきーに感謝してくれてもいいんじゃないの。


そうブツブツ呟いていると、今まで黙っていたとっきーがおもむろに立ち上がり、こちらへ スタスタとやって来た。

「名前、」
「何、とっきー。悪いけど、今日の私はいつもと一味違うから。心を鬼にしてとっきーの人気上昇させるつもりだから」

そう言ってそっぽを向くと、とっきーはいつもより眠たげな眼差しで私の手をギュッと握りしめた。

「俺のことは名前がわかってくれたらそれで十分だから」
「とっきー!」

感涙極まって思わず抱きついてしまう。とっきーはどこまでイケメンさんなんだ。
そうだよね、とっきーには私がいる。私だけがとっきーの魅力を知っている、それだけで幸せじゃないか。

「誕生日おめでとう!プレゼント何が欲しい?」
「名前がいるなら、何もいらないよ」
「どっぎー!」

ああ、とっきーが横にいれば嵐山さんだって霞んで見える。
何てカッコイイんだこの人は。
とっきーは何もいらないって言ったけど、やっぱり後で何かプレゼントしよう。
今日の防衛任務が終わったら一緒に買い物でも行こうかな。
とっきー猫好きだしお揃いの猫ちゃんグッズを買うのもいいかもしれない。うへへへへ。


私の中の人気投票ではとっきーは常に1位だからね、他の奴らなんてミジンコ以下の存在だから。そう言いながらとっきーと手を繋いで隊室を後にする。

私はホクホクとこれ以上ないくらいの幸せを噛み締めていた。


「何だこの茶番…」
残された嵐山隊の面々の気持ちを代弁するかのように、佐鳥は疲れきった顔で小さく呟いた。

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