12月25日。そうだとも今日は世間がキラキラと明るい光で照らし出される日。青、白、赤、黄色、その他諸々の色のLEDがきっとそこら辺の木を飾っているのだろう。
町の子供は皆良い子にしながらサンタさん、もといお父さんお母さんを待っているのかもしれない。いや待て、サンタクロースは恋人だったんだっけか。
ショッピングモールには大きなツリー、アクセサリーショップには可愛らしいトナカイモチーフだとか雪だるまモチーフだとかのブレスレットやピアスが並んでいるに違いない。
いえーいメリークリスマス。もう一度言おう。メリー、クリスマス。
そうなのである。今日はクリスマスなのである。

「なぁぁぁのおおおおにーー!!どうして私は一人こんな時間まで残業しているの!?!?」

あぁいけないいけない私としたことが会社のトイレで思わず(かなり)大きい独り言を言ってしまった。
いいですよぉ。どうせ素敵なハッピーでメーリーなシャイニングクリスマスな一日を過ごしてくれる恋人なんてそもそもいませんよー。何が恋人はサンタクロースじゃ彼氏いないとプレゼントももらえないってか。
なんて思いつつ自席に戻り仕事モードに切り替える。うだうだ言っても仕方がない、さっさと残りの仕事を片付けよう。よし、このペースなら12時回る前には帰れるぞ。

カタカタカタカタ。

こんな時間、こんな日。気づけば周りには人はほとんどいなく、響くのは自分のパソコンが奏でるタイピング音のみ。
そして暫くして

ッッターーーン!

勢いよく自分の薬指がエンターキーを叩く。
「ッいよォーーし!!終わった終わった!さっさと帰ろ!お疲れさまでしたー!」
若干キーボードに八つ当たりしてごめん、と心の中で呟いたがパソコンなんて気にしている暇はない。終わった、今日のお仕事が終わったのである。
時計を見れば11時半。まだ日付は跨いでいない。 数名から若干の「おつかれー」という言葉を受けながら速足で帰る。
あーやだやだ年末年始ってなんでこんなにせわしないのかしら。

いっそのことクリスマスなんて早く過ぎてしまえばいいのに、もういくつ寝るとお正月かなー。なんて考えながら歩いているといつもの帰り道のはずがいつもと違い、イルミネーションのおかげで少し明るいことに気づく。嫌だ嫌いだなどと言いつつもこうして町が綺麗に彩られるのは正直悪くない。と思ってやらないでもない。

「はぁーあ。でも何にもクリスマスらしいことしないで終わるのも悲しいしコンビニでスイーツでも買って帰るか…」

深夜のおやつほど魅力的なんだよなぁ・・・
今日くらい自分を甘やかしたっていいじゃないか。そう思い家へ向かう途中にあるコンビニに立ちよった。

「あー肉まんもおいしそうー…あったかそう…うー……うーーーーーーーん流石に、この時間に肉まんも食うのは…うーーん」


一人中年のおっさんのような声と欲望を出しながらレジ付近で唸っていると

「お?こんな時間に奇遇だな!よォ、嬢ちゃん」

なんてこったい知り合いに出くわしてしまった。よりによってこんな疲れた顔して肉まんを食い入るように見ているところを。あぁせめてメイク直してくるんだった…。

「ら、ランサーさん…ドウモー」

-------------------------------------------------------

彼は同じマンションに住むさわやか青年ことランサーさんである。
きっと本名じゃないんだろうけど私はそう呼んでいる。というかそう呼べと言われたのだ。

たまたま休日によく行くお気に入りのカフェで働く店員さんが同じマンションに住んでいると知ったときは驚いた。数か月前、今日みたいに会社の帰り道でばったりとバイト帰りのランサーさんと出くわしたのである。「あァ?ウチの店来てくれてるお嬢ちゃんじゃねーか」と気さくに話しかけてきた彼のコミュ力ったら凄い。

こうしてカフェだったり近所だったりで時々会って仲良くなってからも中々名前を聞いても教えてくれなかったので手に持っていたタバコの銘柄、"Caster(キャスター)"さんって呼ぼうとしたら何故かもの凄く驚いた顔をした後全力で拒否してきたんだっけか。その名前は今は嫌だランサーにしろ、と言われたからランサーさんと呼んでいる。まぁその話はまた今度。

「嬢ちゃん仕事帰りか?」

「そうなんです、世間はクリスマスムードなのに悲しいったらない、ハハハ…」

「そりゃお疲れさん。なんだぁ、折角のクリスマスだってのに一緒に過ごすイイヒトとかいねぇのか?」

「は、ハハハハハ・・・ハハッ・・・・」

「おい嬢ちゃん俺が悪かった。悪かったから、な?」

「そんなランサーさんこそ素敵な美人彼女さんとかいそうじゃないですかコノヤロー」

「いやぁーモテる男はつらいぜ」

「一発なぐらせろです」

そんな冗談めいた会話をしていたらあっという間にマンションについてしまった。なんか、ちょっと、残念。

「ランサーさん、お話に付き合ってくださってありがとうございました。」

ポチ、とエレベーターのボタンを押して待つ。

「おう。こちらこそ、だ。」

エレベーターに乗り込む。

「あっ、そうだ。ランサーさん、折角なので、メリークリスマス!といってもさっきコンビニで誘惑に負けて買ってしまったスイーツですが、よかったら」

お互い同じ階で降りる。

「いいのか?」
「今日のお礼とクリスマスのプレゼントです」
「じゃ、ありがたく受け取っとくぜ。ありがとよ」
「いーえー。それじゃあおやすみなさい。」

あーあ、なんか、一気に今日が終わってしまう気がしてきた。
そうして自分の部屋向かうためランサーさんに挨拶をしたら「あっ、ちょっと待ってろ!」と言って急いで自分の部屋へと入っていったランサーさん。

「?どうかしました??らんさーさーーん?」
なんだろ、この間話してた漫画貸してくれるのかな?
そんなことを想いながら扉の前で待つこと数十秒。

「またせたな!ほらよ!俺からもメリークリスマス、だ」

扉が勢いよく開いたと思ったら中からランサーさんが出てきた。ニカッっという効果音が付きそうな飛び切りの笑顔とともに。
そして右手で差し出されたのは

「えっと…。あ、これ…!ポインセチア!いいんですか?!」

ちっちゃなサイズの真っ赤なお花。バスケットに可愛らしく飾られたポインセチアの花だ。
聞いた所臨時で花屋のバイトのヘルプに入ったところ、お礼としてもらったらしい。

「まぁ男の一人暮らしの部屋に飾られるよりは嬢ちゃんの部屋の方が似合うだろ?まぁ貰ってくれや」
「わぁ…ありがとうございます!メリークリスマス、です!!」

嬉しいなぁ!可愛いなぁ!!ふふふふふー!
「ランサーさん、素敵なプレゼントありがとうございます!そして今度こそおやすみなさいです!」
と言いながら本日2度目のお別れしようとしたところ、

「あーーー。ちょっと待て。」

また、引き留められた。

「なんでしょう?」

「あ?あーー。だぁーーーー。あれだ、あれ。」
「あれ?どれ?何?どうしました?とうとう寒さにやられました?主に頭が」
「おいコラ。襲うぞ。」
「ぎゃぁへんたーい」

こうしてまたいつもの冗談めいた会話が始まってしまう。おぉっといけないつい楽しくて。
思わずフフッ、っと笑ってしまったらランサーさんが急に頭をガシガシッとかいて

「今週の土曜開いてるか?」

少し恥ずかしそうに視線をそらしながら、ぽつりと一言。

どうやら今年の今年は青いサンタさんが数日遅れでやって来そうです。

 


TOP