別に私は、ロマンスを求めて審神者になったわけではない。確かに、可愛いやら格好良いやら、とにかく顔の良い男士が揃っているのだから、そういう方向へこころが向いて行ってしまう気持ちは分からなくもない。私も、テレビの中や漫画の中のそういった人物に憧れたことがあるから。それが恋と呼ぶものだったのかどうかは、未だに分かりはしないけれど。恋愛感情というのがどういうものなのか分からないのだから、まあ、お察し下さいというやつだ。私にとって男士たちは、どちらかといえば家族や友人に近いのだと思う。カミサマ相手にこう表県するのは失礼な話かもしれないが、友愛の情はあっても恋愛感情は砂粒程も存在しないだろう、と言い切れる。少し、私の話をすることにしよう。審神者としての名前は、緋月。性別は女、歳は二十代。高校在学中に審神者としての素質があると分かって、卒業と同時に就任した、どこにでもいるような普通の小娘だと思う。一つ、普通じゃないところを挙げるとするなら、本丸に来てから歳を取らなくなった、ということだろうか。私はここ数年、容姿がまったく変化していない。もしかしたら、身体の成長が止まっている、と表現するほうがしっくりくるかもしれない。時の政府に検査もしてもらった(というかほぼ強制的にされた)けれど、詳しい原因は分からなかった。とくに不便は感じていないし、私の身体のせいで本丸の皆と揉め事が起きただとか、誰かと誰かが本気の斬り合いになっただとかは、今のところは無い。成長が止まっているからといって、体調不良が起こらない、というわけでもなかったりする。むしろ頭痛さんとは十年来の付き合いだ。ああそれから、初期刀は加州清光、初鍛刀こと初短刀は秋田藤四郎。顕現順は特に面白くもないだろうから割愛するとして、あとはそうだな、今居るにっかり青江は二振目、だったりする。と言っても折れたというわけではなくて、気がついたら本丸から居なくなっていたのだ。初めのうちは皆に対してかなり過保護にしていたから、嫌気が差して出て行ってしまったのかなあ、と思ってはいたりする。真実は神のみぞ知る、ではなく本刃のみぞ知るのだから、今いる青江に聞いたところで答えは分からないのだけれど、嫌われているわけではなさそうなのでまあ良いかなと思うことにした。姿を消してしまった事を嘆いたところで、彼が戻ってくるわけでもないのだし。…とまあ、あまり長々と話すのもなんだか気が引けるから、私の話はここまでにしようかな。空を見上げて、あ、と間抜けな声を出す。身体の成長が止まってしまったせいでここ数年現世に帰れていないけれど、このまあるく明るいお月様を、家族も向こうでみているといいな。そんなことをぼんやりと思いながら、辺りを明るく照らす満月に向かって私はめいっぱい手を伸ばした。