鏡を見ながら、自身の首に手を添えてみる。自分で締めたのなら苦しさで力を緩めてしまうけれど、他の誰かが絞めたなら、私は呆気なく呼吸を奪われ死ぬのだろう。
「そうなったら、どんなにええやろなあ」
ぽそりと小さな声でつぶやく。時々、思ってしまうのだ。審神者は基本的には戦場に出ないけれど、もし本丸を襲撃されたら、命を落としてしまうかもしれない。それならば、敵の手にかかって死ぬくらいならば、いっそ自分で…と。溜め息をついて、洗面所を後にする。向かうのは台所、本丸のみんなのように言うならば、厨。今の時間なら確実に光忠さんに会うことができるはずだ。ただよってくる味噌汁の匂いが、光忠さんお得意のあわせだしの香りだから。…いや、私は腹ぺこキャラではないんだけれど。廊下を進んでいってひょこりと厨に顔を出せば、思った通り鍋の前に光忠さんがいた。とたとたとわざと足音を立てて近づいて、声を掛けてみる。
「みーつたーださん!」
「ご飯ならもう少し後だよ?」
間髪入れずに返ってきた言葉に、思わず「匂いに釣られてきたわけでも、摘まみ食いしにきたわけでもないし!」と返してしまった。それを聞いた光忠さんはこちらを振り返り、私の姿を確認した途端に苦笑いを浮かべる。
「ごめんね、大和守君が来たのかと思って。…じゃあ、どうして?」
「うん。…うん。私、さ、弱いやん」
「…、そう…だね」
「だから、な」
一呼吸、置いて。
「もし×××って言ったときは、きっと、私のことを殺してな?」
笑うでもなく泣くでもなく、まっすぐに彼のことを見上げて、言葉を送り出す。主を最期まで護るのが初期刀、最期まで寄り添うのが初鍛刀の役目だと言うのならば、死ぬときは、初めての太刀である彼にこの首を落として貰おう。そう、決めたんだ。