「主君!どんぐりがこんなに落ちていました!」
そんな声とともに、拾い集めたどんぐりを両手に抱えて駆けてくる少年の姿に思わず頬がゆるんだ。秋田藤四郎。私の初鍛刀であり、懐刀。そして初めて修行に送り出した刀だ。雨の日は仕方がないけれど、そうでない日は外へ出てあちこち見て回る姿を見かけることのほうが多い。顕現したときに外に出られてわくわくする、と言っていたし、それは数年経った今でも変わらないようだった。
「秋田くん、いつも素敵なもの見つけてきてくれてありがとう!主君の宝箱、秋田くんからのお土産でいっぱいになりそうやわあ」
「本当ですか!?」
ふにゃん、とやわらかく可愛らしい笑みを浮かべる彼の前に、彼と同じ桃色の小箱を置いて蓋をあければ、うわあー!と嬉しそうな声が上がった。
「な、もうすぐいっぱいやろ?」
「…あ、中身を確認してみても良いですか?」
「だんないよー」
了承の返事をすれば、秋田くんは箱をそうっとひっくり返した。そしてひとつずつ拾い上げると、大切なもの、愛しいものを見つめるような目でそれらを眺めながら箱の中へと仕舞っていく。海辺で見つけた、二種類の白い貝殻。夏にみんなで飲んだラムネの瓶に入っていたビー玉。これはいち兄が力業で瓶から取り出したのだと、後日薬研さんから聞いた。遠征先に咲いていたという四つ葉のクローバー。その日見つけた中で、一番大きかったらしい蝉の抜け殻。蝉が嫌いなので受け取るのを全力でお断りさせて頂いたが、そのあとの泣きそうな顔に罪悪感を感じて、やっぱり貰うことにしたのを今ではめちゃくちゃ後悔している。箱を開けるたび私のほうが泣きそうだ。せみこわいきらい。厚くんが全力で弾いて行方不明になり後日発見された、一部分の欠けたおはじき。桜の花に、山茶花の花びら。銀杏や紅葉の葉っぱ。種類は分からないけれど、虫食いで変わった形になった葉っぱ。ひまわりの種、南天の実。可愛らしい飴の包み紙で乱ちゃんが折ってくれたという、小さな鶴。万屋で買った駄菓子に入っていたあたりの紙。他にも、たくさん。この小箱に詰まっているのは、彼の思い出であり私の思い出でもある、いろんな宝物たち。その中に拾ってきたどんぐりを二つ入れると、秋田くんは満足そうに微笑んで箱の蓋を閉めた。
「この箱がいっぱいになったら、中身ひとつんつ取り出して、一緒に思い出話しよか」
「はい!」
そしたらいくつめかになる箱を用意して、またそこに思い出を集めていこう。