こんもりとご飯のよそわれた安定くんのお茶碗を見て、ほげえ、なんて声が漏れてしまった。今日は清光さんとの手合わせをお願いしていたからか、盛られたご飯は普段の倍の量だった。本人の希望でこれだけの量なんだろうけど、それは分かっているんだけど、なんというか。
「安定くんって、ほんとよう食べるなあ…」
思わず口からこぼれた言葉にはっとして安定くんを見てみると、しばらくきょとんとした後にぽふりと頬を赤く染めた。あ、可愛い。
「最近は少なめにしてたつもりなんだけど、手合わせしたらお腹が空いちゃって…そんなに多いかな?」
頬を染めたままこてんと首を傾げ、お茶碗と私を交互に見つめながらたずねられて、可愛いの暴力ってこういうことを言うんかなーと思考回路があらぬ方へと脱線していった。だって仕方ないと思うの、と心の中で言い訳をしつつ、記憶に残っている弟のお茶碗を思い出してみる。あの子も丼でご飯を食べていたから…安定くんのこのご飯の量も、丼一杯分に違いない。たぶん。きっと。
「んー、丼一杯くらい…やんな?うちの弟も丼でご飯食べとったし、運動した後の男の子ならこの量でも普通なんちゃうかなあ…お茶碗に盛られとるからいっぱいに見えるだけかも!」
私の言葉に、安定くんは再びお茶碗に目線を移して「そうかな?そうかも。でも…」と自問自答を繰り返す。その姿を見た清光さんがほら、と安定くんの脇腹を肘で小突くと、ごめん、と小さな声が上がった。
「えっと、皆、手を合わせて」
声を合図に、ぱんっ!と一斉に手を合わせる。そして。
「いただきます!」
安定くんの号令に続いて皆でいただきますを言うと、お箸を持って、光忠さん特製のお味噌汁、歌仙さん作の生姜焼き、ふっくらほかほかのご飯、とそれぞれ好きな物へと手を伸ばしていく。安定くんはというと、てんこ盛りのご飯を頬張ってしあわせそうにふにゃふにゃの笑顔を浮かべていた。その姿を見てやっぱり美味しそうに食べる安定くんが好きだなあ、と再認識したのと、付け合わせのミニトマトが隣に座っていた御手杵さんの所まで吹っ飛んでいったのは、ほぼ同時だった。