ああそうだ、と先生が何かを思い出したように呟いた。
「病院の近くに、カフェ兼バーが出来てね。」
今度、休みが合ったら皆で行ってみたいね。やわらかく微笑んで言う先生に、二人ではい!と全力で返す。彼女は甘い物が好きだから、カフェ、の部分に反応したらしく、パンケーキが食べたい!だとか、パフェはあるかな?だとか、メニューを想像しては幸せそうな表情を浮かべている。カフェ兼バーならば、昼間がカフェで夜がバーだろうか。先生にお酒を飲ませてしまうわけにはいかないため、行くならカフェでの営業時間であろう昼間にしなければ。ああしよう、こうしよう、と一人で計画を練っていると、一二三が「そーいえば」と声を上げた。
「先生が言ってる店だと思うけど、なんか新しい店が出来てんなーって覗いてみたら、そこの店員が君にちょー似てたんだよね」
マジびびったし!と無邪気に笑って話す一二三とは反対に、彼女の顔からすうっと表情が消えた。石のようにぴしりと固まってしまって動かなくなったのを見て、ああ、これは触れてはいけない内容だ、と悟る。慌てて一二三に制止の声を掛けるも、どうやら彼女の様子が変わったことにまだ気がついていないらしく「んー?どしたの、どっぽちん?」なんて不思議そうに首を傾げている。
「その人の、なまえ、は」
絞り出したような彼女の声にわずかに表情を曇らせたあと、んー、と考えるそぶりを見せる一二三。わざと気づかないふりをすることにしたのだろう、と思う。
そして「確かー…」の言葉の後に、彼女の苗字が唇から紡がれる。
「ガラス越しにちらっと見ただけだから、合ってるかは分かんないけど!」
きゅ、っと、彼女が唇を結ぶのが、見えた。
そっくりな見た目に、同じ苗字。そして、彼女のこの反応。おそらく、以前彼女からちらりとだけ聞いた、彼女の双子の姉、なのだろう。それを肯定するように、ふるえる声が響いた。
「私の、姉さん、だとおもう。………双子、なんだ、わたしたち」
作り笑いを浮かべる彼女は今にも泣き出してしまいそうで、誰も、何も言うことが出来なかった。