長時間書類とにらめっこした後は、目が疲れてしまって困る。何度か擦ってみるけれど、目の前の書類の文字が霞んで見えてしまう。
「うあー、目しょぼしょぼする…書類の文字がはっきり見えやん…」
うえー、と変な声を漏らしていると、どうしたの?という近侍の清光さんの声。
「書類片付けとったんやけど、長いことにらめっこしとったせいで目がしょぼしょぼするんさー」
だからちょっと今、清光さんの顔が見づらい!と続ければ、そう言うと思って、と懐から何かを取り出す仕草。目を凝らして見てみれば。
「…めぐすり?」
「そ。主、書類仕事の後いつも『目がー!』って言うからさ」
さすがは私の初期刀、長い付き合いなだけあって、こんな私のことでも良く分かってくれていてびっくりだ。いや、今まで書類仕事の後にさんざん目がー!と騒いだ覚えが無い訳でもないけれど、世界一可愛い清光さんはとても気が利く、というのは間違いない事実だから、この際気にしないことにしよう。………ここで、問題がひとつ。
「それ、しみるんやろ?」
今しがた取り出された目薬を指さして問いかける。たぶん、今の私は心底嫌そうな顔をしているに違いない。だって、スースーしてしみる目薬が、大の苦手だから!
「これはしみないやつ。ほら、そこに座って上向いて」
「嫌やー!そう言っといて、実はしみるやつなんやろ?そんな驚きは求めてないもん!!」
全力で駄々を捏ねる私に、清光さんは、はぁ、と小さくため息を吐いた。自分でも子供みたいだと分かってはいるけれど、苦手なものは苦手なのだからしょうがない。前に一度、白い彼に騙されたことがあるから余計に疑ってしまう。顕現初日に単独での執務室突撃禁止令を出したのが、つい最近のことのように思えてくる。
「主」
「なに、」
むにり。返事を返しかけたところで、両手で頬を挟まれる。いったん仕舞ったのか、手の中に目薬は無さそうだ。彼の方が身長は高いから、少し見上げるような状態で顔の向きを固定されてしまったのだ、とぼんやりと気付いた時には既に遅く。
「はい、あー」
「あー?」
訳も分からないまま、言われた通りにぽかんと口を開け声を出すと、頬に添えられた手がするりと居なくなった感覚。ふ、っとその手が視界に入った時には、しっかりと目薬が装備されていて。ああっ!?と声を上げるのと同時に、私の両目に雫が落ちた。

「ね、しみなかったでしょ?」

星屑のようにきらきらとした、清光さんのやわらかな笑みが見えた。