にこやかに、格好つけてそう宣言したのは、かもめ学園の制服ではなく、紺色のセーラースカーフが特徴的な、どこにでもいそうな黒いセーラー服をまとっていた。異質と言えば、異質。彼女だけがかもめ学園から切り離されたように映る。ただの制服であるはずなのに、嫌に彼女に似合っている。ともすれば、かもめ学園の制服よりも。
一本に結い垂らされた三つ編みも、その宝石のように青い瞳も。にこやかな笑顔も。どこか、綺麗で、怖いほどに美しかった。
それはそれとして、彼女のあいさつは些か趣向が凝らしてあるというか、変なものだった。週刊少年ジャンプ――それが何を意味するのか分からず、教室は静寂を綿で敷き詰められていた。当の本人は伝わらなくて少しばかり悲しかったのか、眉を下げて「『なーんて、冗談。冗談だよ』」とヘラヘラ笑う。担任に自分の席がどこであるかを尋ねる。
無機質で人の気配なんて消えたみたいな教室の中で、彼女の声だけが活きていた。スキップするように軽やかに歩き、流麗な動作で席に座る。隣の席の女子――八尋寧々に対して「『こんにちは、よろしく』」とまた笑う。
「う、うん! よろしく!」
「『あっはは、そんなに緊張しないでよ』」
いつの間にか、綿が溶けてきている。朝のホームルームが終わると、皆一斉に球磨川のもとに走り、次々と矢継ぎ早に質問していく。時折「彼氏いる?」なんて下世話な質問が入り混じっていたが、彼女はそれをのらりくらりと躱しながら的確に質問に答えていった。
「『ね、八尋さん』」
「ひぃ!? って、球磨川さんかあ……」
旧校舎の三階。その廊下。
とある目的のためにそこに来ていた寧々の背後から球磨川が声をかけた。いきなりのこと、完全に人がいないと油断していたのだろう。彼女は大げさに肩を揺らし、短い悲鳴を上げた。素早く振り向けば、ニコニコ笑顔の球磨川がいた。ついてきたのだろうか、「『一人だったら迷いそうだね』」と口にしていた。
第零の怪
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