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  wtネタ

■迅さん(13歳)と幽霊夢主がボーダー設立から今まで過ごしてきたお話
びっくりするほど短い
(デフォ名:壱木 豊)

追記から
「……きみ、何かサイドエフェクトでも持ってるの?」
まだ中学生だと思われる男の子が、私に向かって話しかけてきた。私はびくりと肩を震わせ、目を白黒して思い切り息を吸い込む。
「私の事見えるの!?」
質問に質問で返してしまうのは、私の悪い癖だ。いやだがしかし、これは致し方ない。幽霊である私の姿は今の今まで誰にも見られる事なく過ごしてきたから、やっと自分を認識できる人間と出会えた嬉しさでいっぱいになる。きっと彼も、私の姿が完全に人間らしく見えたから話しかけたのだろう。よくアニメや漫画で描かれるような足が透けている幽霊なんてものではなく、見える人にとってはどこからどう見ても人間なのだ。私自身も最初は自分の姿に騙されたものだ。まあ、それも今となっては良い思い出だが。
それはさておき、質問に質問で返してしまった事に漸く気付いて、話を戻そうと軽く咳払いをする。目の前の少年は未だ目を白黒させている。
「ご、ごめんね。私の事見える人って初めてだったからさ。えーと、サイドエフェクト、だったよね。私は何も持ってないよ」
「はあ……。それより、見える見えないってどういう事?」
「ああ〜、それね。私幽霊だから、そういうこと」
「はあ……?」
疑いの目を向けてくる少年に頑張って幽霊アピールをしても中々信じて貰えない。た、確かに自称幽霊とか怪しすぎるけどさ〜!?ちょっとは信じてくれてもいいんじゃない!?と反抗しても更に怪訝そうな顔をされるだけだったからもう口をつぐんだ。拙い私の脳ではどうしたって幽霊だと信じて貰えないから、ここからは行動で示そうと思う。うん、それが一番手っ取り早いな!有機物には触れられて無機物には触れられないという性質と、幽霊らしく空を飛べるという性質を駆使してアピールすると、流石にこれは驚いたのか少年は少しだけ表情を変えた。よし、幽霊アピール成功か!?
「そういうトリガーじゃ……ない?」
「君疑り深いねえ!?」
そろそろ信じてよ!と言っても全く聞く耳持たずな少年に、流石の私も諦めがついた。うん、信じて貰えなくていいや。ただ暇だから話しかけただけだったし、別に信じて貰えなくても……あんまり良くなかったりするけど。
幽霊アピールをしたとは言えど、幽霊になったのは自分でもよく分からなかった。いや、分かってはいる。そりゃあ簡単な話、私が自殺で死んだからだ。死因はこうして明らかになっているのに、どうしても自殺した理由が思い出せない。自殺するくらいなのだから、きっと過酷な状況があったのだろう。それを知るのに怖さは勿論あるが、何も知らないまま成仏してしまった時の事を考えるとそちらの方が断然怖いものだった。別にその意識の持ち方を誰かに肯定されたい訳でも無く、ただ自分が自分であるための抑止剤だと認識している。
ふと、少年が私を見上げて口を開きかけると、後ろから他の人の声が聞こえてきて、少年は視線を私の後ろへ移動させる。私もちらりと確認してみると、そこには一人の男性が立っていた。
「悠一!ここに居たのか。探したぞ」
「ごめん、最上さん。ちょっと気になる事があって」
どうやら少年は悠一と言うらしい。そして男性の方は最上さん。よし、とりあえず覚えておこう。
悠一君は少し戸惑いの表情を浮かべながらもこちらを確認するように視線をやると、すぐに最上さんの方へ視線を戻した。その目を見るだけで、私を幽霊だと信じていない事が目に見えて分かる。……でも、流石に突然幽霊発言は悪い事したかなあ。
「ねえ、最上さん」
「ん?何だ?」
「……おれの後ろに、何かいない?」
「何かって……何も居ないが?」
「!……そう」
最上さんがきょとんとした表情でそう答えると、悠一君は分かりやすく肩を震わせる。それでも、信じたくないという一心なのか、最上さんに問い詰める悠一君に、どんどん私の良心がズキズキと傷付いていく。本当にごめん。浮かれすぎた。漸く落ち着いた悠一君は軽く溜息をついて「大丈夫。何でも無いよ、最上さん」と言って口元に笑みを浮かべる。それを見た最上さんは若干心配そうに「そうか?」と言ってぽん、と悠一君の頭を撫でた。悠一君はやめてよ、と言いながらも少し嬉しそうにはにかんでいた。え、何ですかこれメッチャ幸せムード漂っちゃってるじゃないすか。正に親子じゃん可愛いかよ……もう……すき……。おっと、心の声が漏れる所だった。
「皆もう集まってるんだ、早く行け」
「うん」
悠一君は幾分か疑いが減ったその目で私を見ると、何も言わず最上さんを追い抜いて走り去った。小さな背中をぼんやりと見送り、ふう、と今度は私が溜息をつくと、最上さんは口を開いた。
「相変わらずだな、豊」
懐かしむように目を細めてしっかりと私を視界に入れる最上さんは、何事も無かったかのように私に話しかけた。どうしたらいいのか、何故かいたたまれない気持ちになって、逃げるように最上さんへ苦笑いを浮かべて、たった一つの言葉を吐いてみる。
「そうですね」
見えなくなっていたら、良かったのに。