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ag夢
先日投げたag夢の設定を引き継いで書いたお話を載せようと思います〜!
夢主の過去的なものです。恐らく続いたり続かなかったりするのかな〜。
デフォ名:暁
「私、薬師になりたい!」
私、忽那暁が夢を語り出したのはまだ幼い頃だった。
自分の親代わりである神社の宮司――朱雀さんは、そんな私の訴えに驚いた様子で目をぱちくりと瞬かせた。そうして優しく微笑んで私の頭をぽんぽん、と撫でる。
「そうかい。じゃあ、これからしっかり勉強しないといけないね」
その言葉が嬉しくて嬉しくて、私はその場で思い切り朱雀さんに抱きついたのを今でも鮮明に覚えている。
私が薬師を目指し始めたのは朱雀さんがきっかけだ。言うまでもなく、彼は神社の最高責任者――宮司という職業に就いていながら、私のような身寄りのない孤児を引き取り面倒を見ているようなお人好しが朱雀という人間だった。私は神社の中で誰よりも朱雀さんを慕っており、本物の親のように接していた。そんな朱雀さんは本職である宮司の仕事の合間を縫って、薬師として小さな町で活躍しているのを私は知っていたのだ。以前朱雀さんの仕事について行った事があり、薬の豊富さ、そして調合の方法により効果が違ってくる多様さに心惹かれ、こうして張本人に訴えかけている訳である。
それから仕事について行く許可を得た私は、毎日のように朱雀さんの後ろを追って歩くようになった。町の人達の往診だけだと思っていた仕事は、実は遠くまで足を運んだり、時には幕府の元まで足を運ぶ事もあった。
「君、誰? 最近ここによく来てるみたいだけど、強いの?」
そんなある日、往診先でとある男の子と出会った。
往診先の名前はなんだか難しい響きでよく覚えてはいないけれど、強そうな男の人達が沢山いる場所だ。その中に私と同年代であろう、桃色に近い橙色の髪の毛を三つ編みで一つに纏めた男の子が私に話しかけてきた。
確か彼は、別の人が噂をしていた子だ。確か「最近入ってきた餓鬼」と揶揄されていた。どうやら訳ありらしいのだが、私は朱雀さんの仕事を見るのに夢中で内容はこれっぽっちも覚えていない。
「私? 私は朱雀さんの仕事を見に来ただけだよ。ぜーんぜん強くない」
「朱雀?」
「ここに往診しに来てる薬師だよ。知らない?」
ああ、聞いた事あるような。と顎を人差し指と親指で挟むようにして、考えるようなポーズをする彼。どうやら彼も興味の無いことにはとことん興味が無いようで、曖昧な返事をしてその会話は即終了してしまった。
秒速で終わってしまった会話に、私はどうしたものかと頭を捻らせて口を開く。
「あ、私の名前は忽那暁。気軽に暁って呼んでよ」
「別に俺、君の名前聞いてないんだけど」
「まあまあ、そう言わずにさァ」
名前知ってた方がこれから役立つかもしれないじゃん、なんて根拠もへったくれもない事を言ってみる。この一言に特別な意味なんて込めていない事は私も彼も分かっていて、それでもこの口が破茶滅茶な言葉を紡ぐのは、きっと私のサガというものなのだろう。
彼はニコリともしない仏頂面でこちらを警戒するように見遣り、一転、呆れたように深くため息をついた。
「……神威」
「へ、」
「俺の名前だよ」
神威は照れ臭さからか私に背を向けた。背を向ける直前、神威の横顔がほんの少しだけ居心地の悪そうな表情を浮かべていたのが一瞬見えたから、きっとそういう事なのだろう。そんな子どもっぽい彼が可愛く思えてついくすりと笑いを零すと、鋭い眼光をギロリとこちらに向けて睨んで来た。それがまた何だか面白く感じて笑いそうになるが、次笑ったら流石に本気で殺されそうな予感がするため口を手で押えて必死になって堪える。
ふと、後ろから落ち着いた低い声が私の名前を呼ぶ。なにかと振り返ってみれば、そこには朱雀さんが立っていた。どうやら仕事が終わったらしく、帰るために私を探していたらしい。
「じゃあ、私はもう帰るから。またお話してね、神威」
にっこりと笑って神威に向かいぶんぶんと手を振ってみせる。神威が私に手を振り返してくれない事くらい分かっていたから、そのまま朱雀さんの背中を追うように足を動かし始めた。
「……気が向いたら、ね」
そんな神威の呟きに気づかないまま、私はその場を後にしてしまったのだけれど。
夢主の過去的なものです。恐らく続いたり続かなかったりするのかな〜。
デフォ名:暁
「私、薬師になりたい!」
私、忽那暁が夢を語り出したのはまだ幼い頃だった。
自分の親代わりである神社の宮司――朱雀さんは、そんな私の訴えに驚いた様子で目をぱちくりと瞬かせた。そうして優しく微笑んで私の頭をぽんぽん、と撫でる。
「そうかい。じゃあ、これからしっかり勉強しないといけないね」
その言葉が嬉しくて嬉しくて、私はその場で思い切り朱雀さんに抱きついたのを今でも鮮明に覚えている。
私が薬師を目指し始めたのは朱雀さんがきっかけだ。言うまでもなく、彼は神社の最高責任者――宮司という職業に就いていながら、私のような身寄りのない孤児を引き取り面倒を見ているようなお人好しが朱雀という人間だった。私は神社の中で誰よりも朱雀さんを慕っており、本物の親のように接していた。そんな朱雀さんは本職である宮司の仕事の合間を縫って、薬師として小さな町で活躍しているのを私は知っていたのだ。以前朱雀さんの仕事について行った事があり、薬の豊富さ、そして調合の方法により効果が違ってくる多様さに心惹かれ、こうして張本人に訴えかけている訳である。
それから仕事について行く許可を得た私は、毎日のように朱雀さんの後ろを追って歩くようになった。町の人達の往診だけだと思っていた仕事は、実は遠くまで足を運んだり、時には幕府の元まで足を運ぶ事もあった。
「君、誰? 最近ここによく来てるみたいだけど、強いの?」
そんなある日、往診先でとある男の子と出会った。
往診先の名前はなんだか難しい響きでよく覚えてはいないけれど、強そうな男の人達が沢山いる場所だ。その中に私と同年代であろう、桃色に近い橙色の髪の毛を三つ編みで一つに纏めた男の子が私に話しかけてきた。
確か彼は、別の人が噂をしていた子だ。確か「最近入ってきた餓鬼」と揶揄されていた。どうやら訳ありらしいのだが、私は朱雀さんの仕事を見るのに夢中で内容はこれっぽっちも覚えていない。
「私? 私は朱雀さんの仕事を見に来ただけだよ。ぜーんぜん強くない」
「朱雀?」
「ここに往診しに来てる薬師だよ。知らない?」
ああ、聞いた事あるような。と顎を人差し指と親指で挟むようにして、考えるようなポーズをする彼。どうやら彼も興味の無いことにはとことん興味が無いようで、曖昧な返事をしてその会話は即終了してしまった。
秒速で終わってしまった会話に、私はどうしたものかと頭を捻らせて口を開く。
「あ、私の名前は忽那暁。気軽に暁って呼んでよ」
「別に俺、君の名前聞いてないんだけど」
「まあまあ、そう言わずにさァ」
名前知ってた方がこれから役立つかもしれないじゃん、なんて根拠もへったくれもない事を言ってみる。この一言に特別な意味なんて込めていない事は私も彼も分かっていて、それでもこの口が破茶滅茶な言葉を紡ぐのは、きっと私のサガというものなのだろう。
彼はニコリともしない仏頂面でこちらを警戒するように見遣り、一転、呆れたように深くため息をついた。
「……神威」
「へ、」
「俺の名前だよ」
神威は照れ臭さからか私に背を向けた。背を向ける直前、神威の横顔がほんの少しだけ居心地の悪そうな表情を浮かべていたのが一瞬見えたから、きっとそういう事なのだろう。そんな子どもっぽい彼が可愛く思えてついくすりと笑いを零すと、鋭い眼光をギロリとこちらに向けて睨んで来た。それがまた何だか面白く感じて笑いそうになるが、次笑ったら流石に本気で殺されそうな予感がするため口を手で押えて必死になって堪える。
ふと、後ろから落ち着いた低い声が私の名前を呼ぶ。なにかと振り返ってみれば、そこには朱雀さんが立っていた。どうやら仕事が終わったらしく、帰るために私を探していたらしい。
「じゃあ、私はもう帰るから。またお話してね、神威」
にっこりと笑って神威に向かいぶんぶんと手を振ってみせる。神威が私に手を振り返してくれない事くらい分かっていたから、そのまま朱雀さんの背中を追うように足を動かし始めた。
「……気が向いたら、ね」
そんな神威の呟きに気づかないまま、私はその場を後にしてしまったのだけれど。