君と一緒に居るだけで

「あ、名前さん」

 待ち合わせ場所である公園の時計の下に行くと、私よりも早く到着していた彼と目が合った。今は待ち合わせ時刻の十五分前であるというのに、一体彼はどの位早く着いていたのだろうかと考えると、なんだか待たせてしまった分申し訳なく思えてきた。

「ご、ごめんね。待ったよね…?」
「いや、全然。というか待ち合わせ時間までまだありますし、名前さんも早い方っすよ」

 それに、好きな人の為ならいくらだって待ちますよぉ。と微笑まれてしまい、その笑顔のまぶしさに思わず「ウッ……」と唸りながらダメージを喰らった心臓を精一杯守る。その様子を見た漣君は吹き出すように笑って「なんすかそれ、かわいい」と言ってのけながら私の頭を撫でるのだ。

「も、もうやめて……しんじゃう……」
「だから、そういう反応が可愛いんですってば」



漣君が私の家に来た。予定していたデートは雨が降ってしまった事により中止になりかけたが、そのまま解散したくなかった私は思わず自分の家に来ないかと誘ってしまったのだ。とにかく一緒に居たい一心だったが、今思うと火が出るほど恥ずかしい事をしてしまったなと猛反省している。

「お待たせ。……って、なんでそんな端っこにいるの」

 ひとまずお茶を出さないとと思いグラスを二つ持ってくると、漣君はどこかソワソワとしながらちょこんと部屋の端っこの方に座って居たのだ。緊張しているのは自分だけじゃ無いんだ、と思うと同時に「かわいいなあ」という感情がじんわりと心を侵食していく。

「だって、彼女の家に彼女と二人きりっすよ?……俺、我慢するので精一杯なんで、これくらいの距離は取らせて下さいよ」

 ほんのり頬を赤らめてそっぽを向きながらそう言ってくる漣君のその言葉の意味を数回頭で理解しようとすると、今度はどんどん私の方が赤く熱くなっていく。そんな私を見て「真っ赤」と言って幸せそうな顔をするの、本当にやめて欲しい。