わかりあえない君が好き
「あーんもう私のプリンまた食べてるー」
ぷっくり頬を膨らませて晴矢の目の前で仁王立ちをすると、晴矢は知らん顔して黙々とプリンを食べ続けている。私はその横に座ってさらに眉間のしわを寄せる。
「私ちゃんと名前書いておいたのに…」
「書いたからって食べないとは言ってねー」
「うわー酷い奴ー」
ヤケクソになって晴矢の腕を捻ると、仕返しとして私の頭をばしりと叩いてきた。痛い!と頭を抱えても、うるせーなんて言って再びプリンを頬張るだけだ。
「にしてもよく飽きねえな、プリン。俺ゼリーが良いんだけど」
「はー!?それなら何で私のプリン食べるのよー!」
ぽかぽかと晴矢を叩くと、あーうるせえ!と言って晴矢は最後の一口を口に入れてしまう。目の前で自分のプリンが食べられてしまう場面を見て、つい泣きそうになっていると、ぐいっと肩を掴まれて晴矢と目を合わせられる。そのまま驚く暇もなく、唇を重ね合わせられ、ぬるりと舌が口内に侵入してきたかと思えば、ぬるくなったプリンが私の口の中に入り込んできた。そのまま唇が離される事は無く、プリンをかみ砕くように舌と舌が口内で絡み合う。くちゅり、と水音がする度になんだか恥ずかしくなって、ほんのりと顔に熱が集まる。
やっとの事で離された唇と、舌から繋がってきらりと輝く銀の糸。久しぶりに感じる酸素を吸って、どうにか息を整えていると上から声が降りかかる。
「お前のプリンなんか食べる理由なんて、一つしかないに決まってんだろ」
眉にしわを寄せて私の頬を晴矢の大きな手で包まれると、耳元で囁くように、「気付けよ、馬鹿」と告げられた。
もう分かっていたのに、それを無かったことにしていたのは私の方なんだ。
再び降ってくる唇を今度は優しく受け止め、ぬくもりを探すように自らの手を晴矢の背中に当てた。