組織も世界も捨て去って
「お疲れ様です、イシドシュウジ…いえ、豪炎寺修也様」
「ああ、お前もお疲れ。ここまで着いてきてくれたこと、感謝している」
聖帝“イシドシュウジ”としての役割が終わった修也様に暖かい紅茶をお出しすると、ありがとう、と小さく断ってカップを持つ。
元々修也様とは先輩後輩の関係で、それなりに親しいお付き合いをさせて頂いていた。そして二人が大人になった頃、修也様は私に協力を申してきた。その立ち位置は謂わば聖帝の側近のような物だ。修也様は仲間を欺き、仲間に敵対されようともサッカーを守り続ける道を選んだ。そんな真っ直ぐな思いを持っていたからこそ、私は修也様に着いて行くと決めたのだ。
「何時までそこに立っているんだ。もう俺は聖帝じゃない。だから遠慮することもない」
「……はい、ありがとうございます」
深くお辞儀をして修也様の前のソファに腰掛ける。ふわりとクッションが私の腰を受け止め、その形に添って沈んでいく。
あれから色々な事があり、修也様のお仲間の助力もありこうしてサッカーを守ることが出来たのだ。そんな数多の過去を振り返りながら、こうして修也様のお側にいられる事が希望の光だと、そんな幸福感に浸る。
「お前には色々と無理をさせたな」
「いえ、私の事などお気になさらずに…」
「“など”なんて言うな。俺の大切な人なのだからな」
「っ、しゅ、修也様、」
優しい顔をしていた修也様は一転、私の言葉に反応して真剣な顔つきになる。そして椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらに近づくと私の頬に手を滑らせる。突然の行為に動揺し、何も言葉を返せなくなる。修也様の端麗な顔がこちらへ近づき、その柔らかな唇を私の唇へと触れさせた。短くも、何故か長く感じたそのキスの時間は私の頬をゆで上がらせるのには十分で、一気に熱が顔に集まる。しゅうやさま、と弱々しくその名を呼ぶと、修也様は再び微笑んで私の頬を親指で撫でる。
「ようやくこうして名前に触れる事が出来たんだ。許してくれ」
甘い声でそうささやくと、大切な物を扱うかのように優しいキスが私の唇に降ってくる。今度はそれをちゃんと受け止め、おかえりなさいの意を込めて修也様の服をぎゅっと掴んだ。