君をひとりじめしたいだけ

「名前っ」
「わ、コアラ。どうしたの?」

仕事が終わったのか、いつもサボに向けているむすっとした様子ではなくニコニコと上機嫌で私に話しかけるコアラに少しだけ驚く。きょとんと首を傾げると、コアラは「も〜っ、そういう所だよメルリアは!」と言って体を近づけてぎゅっと抱きしめて来た。そういう所とは?なんて質問をしたら決まって彼女は不機嫌になるためそれは言わずにコアラの背中に腕を回してぽんぽんと軽く叩く。

「それで、今日はどうしたの?やけに上機嫌だし」
「そうそう……じゃーん、ポッキー!」
「なるほど、コアラポッキー好きだもんね〜」
「そうそう!………じゃなくって!」

腕を離してむっとして眉をつり上げたコアラは、袋からポッキーを一本取りだし私にぐいっと近づく。

「名前、ポッキーゲームしよ?」
「………へ、何を言っんむっ!?」

何を言っているんだ、と反論しようとする間もなくコアラは私の口にポッキーを突っ込んで、その反対側をサクサクと食べ始めた。……ああもう、どうにでもなれ!どうせ折ろうとしたらコアラは怒るだろうし、このまま最後までやった方が………良いとは言えないけど。

サクリ、サクリと徐々にポッキーが短くなるにつれて恥ずかしさで頬に熱が集まっていくのが分かる。別にまだキスなんてしてる訳でもないのに、変な気分だ。唇が触れるか触れないかの長さになり、どうしようかと食べるスピードを遅くした途端、コアラがポッキーを引っ張って口に入れ、更に顔を近づけて唇を付けた。急なキスにびっくりして肩をビクリと上げるがそんな私の様子は気にしないまま、コアラの唇がどんどん私の唇を蝕むように喰らい付いていく。酸素が足りず口を開ける度に自分のものではないような艶やかな声が出て、それが脳内に響く度に恥ずかしさが募ってどんどん身体が火照っていく。

あ、これ、コアラのスイッチ入ったかも。どんどんキスが深くなると、決まってコアラは理性のままにグイグイ来るのだ。だから、これは経験則。

「んっ、は……、ちょ、コアラ、私仕事あるからっ」

あまり力の入らない手でコアラの肩をぐいぐい押すと、渋々と言った感じに漸く唇は離された。コアラはちょっと不屈そうにしながらも頬はほんのり赤くなっていて、可愛らしい顔立ちの彼女はそれだけで色っぽく見える。………て、そうじゃない。止めたのは私じゃないか。

「仕事なら………仕方なくも無くも………ないけど…」
「ほら、コアラがいつもサボに喝入れてる様に、私もちゃんとやらないとサボが不貞腐れるでしょ」
「サボ君の話をするなー!」
「ああもう、分かったから落ち着いて!」

何時もはお姉さんなコアラがこうして子どもっぽく振る舞うのは私の前だけで、それにちょっとだけ優越感を抱いていたりする。正直、かわいい。

そんなコアラの頭をぽんぽんと撫でると、コアラはみるみるうちに笑顔になって、ぎゅっと私に抱きついてきた。

「しょうがないなあ、分かったよ。でもその代わり、仕事終わったら一番最初に私の所へ来てね?」
「うん、分かった。約束ね」

えへへ、と花が咲いたような笑みを浮かべるコアラを見ていると暖かい気持ちになって、私も口角が上がるのを感じた。

この後仕事終わりにサボに呼び出され、もれなくコアラとサボの一騎打ちになったのは言うまでもない。



診断メーカー様の「今日の2人はなにしてる」からお借りしました。