人にとってありふれたものでも、自身にとっては些細な幸せとでも言っておきたい。
 少なくともアレが来るまではそういう感覚とは無縁なもので、後ろ暗い件を一瞬でも忘れることが出来たのは酒を嗜む時くらいなモンだった。
 心に余裕が出来るってのは、可能性が広がるのと直結している気がする。
 アレがいるだけで今まで散々食してきたモンなのに美味く感じるようになったり、ほんの気紛れだが物資補充の際はこっそり菓子を買い足して渡したり。無表情だから食べる勢いで好き嫌い判別するしかなかったが、“当たり”を引いたんだなと確信したときはこっちが嬉しくなったものだ。
 アレを寝かし付けてる時、あんまりにも空をじーっと眺めてるから何事かと同じように見てみたら星がとんでもなく綺麗だって感じた。
 その後に星座を聞かれたけどビタ一文わからなくて呆れられたのは苦い思い出で、尾を引き摺っているなんて知られたら自分が率いてる隊の奴らにからかわれるのがオチである。
 団員の好みを把握して配給された物資交換なんて過去に何度もあるし、それこそ夜空だって見飽きる程見てきている。見ているだけで感じようとはしなかったのは、心の何処かで不要だと自己認識していたからかもしれない。
 一時、執念に囚われて偏っていたことはあった。
 それこそ自分の命すら顧みずに、ただ一つの目的だけで生きてきたことがある。
 あれから時が経ったし、流石に自分では変わったものだと自負していたつもりだが抜けきれていないことを改めて認識させられることもあった。
 それにしても団全体が穏やかな空気に包まれることが増えたと思う。
 猟兵には似付かわしくない、純粋な笑顔を浮かべる奴らが増えたのは紛れもなくアレ――姫のお陰だと言うのは団員全員が感じていた。
 だからこそ、姫の口から猟兵になりたいだなんて言葉は出来るなら聞きたくなかった。
 そんな血と硝煙に塗れた仕事なんてして欲しくない――団長は当然、姫の申し入れを拒んだ。
 ひょろっとしていて守りたくなる存在――そんな風に感じていたオレからすれば、何度拒まれようと根を上げないだけでも心底驚いたもので。
 言葉だけでは説得性に欠けると踏んだのか、姫は自ら行動に出始めたのだ。


「――オレに稽古つけてほしいって、本気で言ってんのかいな」
 別にその日は普段と何ら変わらない日だった。
 契約相手と敵対している組織にはたまたま別の猟兵団を雇っていて、その一味が出入りしてるっていう店を下見したくらいなもんで。名もまだ浅い団であることがわかった上で足も軽く拠点へ帰還したというのに、だ。
 自分のテントの中で罠をせっせと整備していれば、珍しく姫が姿を見せた。
 普段なら早く寝ろとどやされる時間帯にも関わらず、だ。
 いつかは訪れるだろうとは何処かで思っていたが、いざ心の準備無しに対応するとなると躊躇いが生じてきっと顔も引き攣ってるだろう。作業する手元の為に傍らに置いたランタンのほんのりとした灯りは、相手の表情を窺うには心許ないが見透かされているように感じてしまう。
 そんなこちらのことはお構いなしに、姫は無表情を貫き通したまま頷く。
「冗談でゼノの貴重な休暇を妨げるようなことしない」
 嘘だとも茶番だとも微塵にも感じていない。いっそそうであって欲しいと願うくらい、真っ直ぐな瞳が突き刺さって胸が苦しくなる。
 姫はどうあっても折れない。こうなるとテコでも動かんし、団長の睨みも通用しない。獅子戦役並にどデカイことでも勃発しない限り、決して意を曲げるようなことはしないだろう。
 結局のところ姫の押しには弱いんだと痛感する瞬間でもある。これは今後の戒めとしてレオに報告しておくつもりだ。
「しゃーないなぁ…。そんなら、オレは練習用の罠準備せなアカンし明後日から始めるってことでええか?」
「うん。ありがとう、ゼノ。助かる」
 ぺこ、なんて音が聞こえんじゃないかってくらい可愛らしく頭を浅く下げた後に「レオ達にも言ってくる」と告げて足早に去っていった。
 足音が遠退いていくのを確認した後に、
「…ありがとう、か。…もっと別んところで使ってもらいたかったなぁ」
 なんてガラにもなく思い始めると深い溜め息が出て脱力しそうになった。
 知らぬ間に手が止まっている。ながら作業なんて慣れたものでも、心に引っ掛かりを覚えればこうも簡単に出来なくなるとは。
 姫が、手を染めてしまうのか。ジブンらと同じように泥臭く、血生臭く、人から称賛されないようなことを生業として歩んでいくのか。
 その道を突き進む為に加担してしまう己の甘さが、悔しくて仕方がない。
「……酒、飲みたくなってきたわぁ」
 相手のいない空間でただ一人、重く呟く。返ってこないことへの安堵に可笑しくて笑いそうになってしまった。
 きっと他の連中も同じ思いだろう。なら、今はそれだけでいいのかもしれない。ジブンだけではないのだから。
 団長やレオのように喫煙者でない以上、こういう時は酒を頼らざるを得ない。今の仕事が終わったらレオを誘ってラクウェルあたりへ飲みに出掛けよう。
 そんで少しだけ、酒の勢いって理由で心の内を吐露させてもらおう。


***


 西風の妖精。そんな二つ名がつくのに時間はさほど掛からなかった。
 団長から承諾を得る前にたまたま実戦を積む機会があったのが大きかったし、みんなが背中を押してくれたのもある。
 フィーには才能がある――団の誰かがそんな話題で盛り上がる中、ゼノやレオは無言でやや苦笑いを浮かべながら聞いていた様子が焼き付いている。
 レオの特訓は近距離戦闘メインで初っ端からハードだったし、ゼノの特訓は最初こそ優しかったものの途中から本物の爆弾を用いてきた。
 隊員達が陰で彼らをスパルタと呼んでいるのにも納得したけど、それでも私に対してはまだ一線越えていないような印象で心の内では納得していなかったと思う。

「――ゼノはなんと答えたんだ?」
「“あーーそんときどう感じたかなんて忘れたなぁ”って言ってた」
 団員から花の種を分けられ、勧められて始めた植物栽培の作業をしながら斜め後ろで見守るレオにぽつぽつと話していく。返答にゼノっぽさを出したせいか、ふふっと鼻で笑ったような声が聞こえた。
 団長から許可を貰った上で、拠点のちょっとしたスペースを拝借している。今のところ芽が出てくる気配はなく、種を植えたやや盛り上がっている土を睨む。水も適量に与えているし、陽も浴びているはずなのに一向に育たないのは何が要因なんだろう。
 なんとなくレオに相談をしてみようと考えたのがきっかけ。内容としては「ゼノに特訓の話を持ちかけた時にどう感じたか聞いたけどはぐらかされた」みたいな感じ。レオにもゼノ同様問い掛けたみたら、正直複雑で戦場には出てほしくないという気持ちだったという答えが返ってきた。
 果たしてこんな片手間で話を持ち掛けていいのかな、なんて逡巡したけど快く引き受けてくれたから素直に甘えることにした。
 もう少し姫は甘えていい、と色んな団員から言われ続けていたけどこれはちゃんと甘えることができている――と思ってる。
「ゼノは決してウソが下手というわけではない。恐らく、お前が相手だからではないだろうか。現に幾度も仕事で敵を欺いているし、そういう役を担うことも少なくない」
「私が相手だと下手になるの? よくわからないけど…それはレオも当てはまったりする?」
「……否定はできんな」
 私が敵じゃないから、とかそんな考えが一瞬過ったけどレオの間と穏やかな声色から推測するとそれだけじゃないのかなと思えた。
 尋ねたところで明確な答えは期待できない。なんとなく、ただの勘だけど形容し難い“何か”なんだろう。二人は理解していて私にはわからないのは、“差”の問題だと直感した。
「フィーにもゼノにも時間が必要なのかもしれないな。お互いに整理がついていないとみえる」
 思わず作業の手が止まってしまった。
 自分の名前がそこで出てくるとは思わず、下ばかり向けていた視線を上げる。
「……私も?」
「ああ、今のお前ではピンとこないかもしれない」
 その通りだった。
 整理とは恐らく心の整理のことを示している。それはゼノだけでは、と。私はとっくについているのに、なんて思った矢先にレオは続けた。
「時が経ってからもう一度尋ねてみるといい。お前は特に、誰かからの影響で大きく成長している可能性がある。そのときは流石にゼノも観念すると思うがな」
「……。わかった。いつになるかわからないけど、もう一回聞いてみる」
 不明瞭な言葉の表現が不穏さを増していたけれど、それ以上の言葉が出なくて黙ってしまった。
 まるで、これから大きな別れがあるような言い方で。私の成長を傍で見てるのが別の誰かのような感じがして。
 何故かよくわからないけれど、刺されてもいないのに胸にちくりと痛みが走った気がした。


***


 あれから、少しばかり時間が経った。
 赤の星座と相討ちとなって団長が死に、フィーは紫電に拾われ団長が亡くなった以上西風の旅団は解散――のはずだった。
 墓というには少しばかり粗末すぎた石碑の前で、フランツ・ルーグマンと出会ったことがすべてのきっかけで。
 当時は話を持ち掛けられた際、何の因果かと感じたものだが冷静になるとあんな場所で出会うことがそもそも異質だったんだと気付く。団長の死を受け入れられない弱さが招いた結果だ。
 蒼のアレもまた、団長と同じ存在だと知らされた時はシュバルツァー達のことが過った。
 以前、シュバルツァーがパンタグリュエルへ招待された折に帝国解放戦線のリーダーが随分ボンを懇意にしていたのが印象的だったからだ。敵対している立場なのにリーダー側が配慮してるみたく映ったのは自分だけではないだろう。
 シュバルツァー達はオレやレオのように、とは言っても断言こそ出来ないが――大切な人が蘇って嬉しいという感情が芽生えたりするのだろうか。それとも大切な人が死してなお利用されて怒りを覚えるだろうか。もしくは、もっと自然の摂理として――。


 龍霊窟での相克によって団長が消えてから間もない。ボンことシュバルツァー達と協力するという約束を交わした後、一旦その場は解散となった。
 フィーはまだ泣いているだろうか。どんな思いで団長の死を受け止めたのだろうか。強い娘だから、もしかしたらもう立ち直っているかもしれない。
 オレたちとは違って、一歩一歩確実に前へ進むフィーはもう迫る決戦に向けて気持ちを切り替えているだろう。
 助っ人として参戦する以上、無様な姿を晒すわけにはいかない。せめて準備は万端に、と意気込んでクロスベル支店の交換屋ナインヴァリに立ち寄って束の間、シュバルツァー達が偶然店に足を運んできた。
 そこには例の蒼と、フィーの姿を確認出来たものだからいつものノリで殺気立ててシュバルツァーを驚かせたのは言うまでもない。
 あと数時間で作戦が始まるということもあり、何を思ったのかシュバルツァーの配慮でフィーと話す時間が設けられた。
 そこでレオまで気を遣って二人きりにさせるのはどうなんだとツッコんでも軽く流される始末。奴はあまり饒舌なタイプでもない為、こうなるとレオは手強くなる。どうあっても頑なに動かないものと判断し、フィーと二人で一先ず食堂で適当に腹ごしらえをすることにした。
 平時なら人目を気にして昼間に大通りの食堂は選択肢に入れないが、戦時となると話は異なってくる。当然客足も少ないし、物資不足によってどこも高騰化しているため好んで外食する者は限られてくるものだ。
 それでもこの店はじゅうぶん安く、客の姿もちらほらと見掛ける。未成年が通うくらいだ、値段は極力上げないよう相当な配慮を裏でしているのかもしれない。
 ラクウェルという街に対して多少の馴染みを覚える人間としては、赤字にならないかと懸念してしまうが。
「私だけ休んでてもいいのかな」
 カウンター席の端でメニューと睨めっこしながらフィーがぼそりと呟く。
 あと数時間で戦争が始まるってのにこんなところで飯なんか食べていていいのか、なんてのはわからなくもない。
「気にしいやな、姫は。休まんと体がもたんやろ」
 隣から視線を感じる。その目はどんな意味が込められているのか、なんて考えてしまう。
 内容に対してか、はたまた姫呼びに対してか。当時から姫呼びなんてガラじゃあないなとは感じていたが、改めて使うと少しだけ小っ恥ずかしかった。
「決戦日だってのに朝から人助けしてたんやろ? なら、少しくらい休んでてもバチは当たらんと思うなぁ」
「…もしかして、リィンから聞いた?」
「おう。まぁ、あの皇太子やボンの性格を考えたら聞かなくても大凡検討はつくもんやけど」
 ギルドに属さずにギルドらしい活動指針はトールズ本校のZ組が基盤であるというのはカイエン公の下で動いていた時分から把握している。最も、その情報の多くは現地に潜り込んでいた蒼によるものが多かった。
 ただ、根本的にZ組は困ってる赤の他人を放っておけない主義が集結している故に、とも思える。ぼーっとしてることが多かったフィーが人の手助けをする立場に属するのは純粋に嬉しいものだが。
 リィンは相変わらずなんだから、なんてフィーは濁しつつ吹っ切れたのかランチセットと店自慢のデッケンズリブとフィッシュパイを注文する。その体でよう食べるなぁなんて茶々入れたら睨まれたのは言うまでもない。
 以前から背の低さに対してコンプレックスを抱いていたがどうやら払拭しきれていないらしい。本人には悪いけどちょっと微笑ましくなった。

「食った食った。やっぱうまい料理食べると士気上がるわ」
 店から出て陽の光を浴びながらぐーっと伸びをする。これから決戦でなければ日常的でかつ健康なのに、なんて思う。全くらしくない行いなのは承知の上で。
 フィーは注文した二品を平らげた後にスイーツを注文するもんだから流石に口をあんぐりさせてしまった。あれだけ食べて決戦の際、動きが鈍くなったりしないものだろうか――そんな考えに耽っていると察したように「別腹だから」とぴしゃりと言い放たれたら最早何も言うまい。
 以前と比べて好きな物も変わったし増えたのを実感する。だとしたら料理のレパートリーも、なんて野暮なことは言わないことにしよう。
 フィーの作るレーションは味に関しては決して美味いものとは言い難かったけど、必要な栄養が充分あってみんなのことを考えてくれてるって伝わるから好きだった。
 今更そんなことを伝えようとは思っていないが。
「迎え来るまでベンチにでも座ってようか」
「うん。話したいこともあったし」
 食堂から出ると目の前に噴水が設けられており、囲うように等間隔でベンチが配置されている。周り込んで入り口から視界に位置する場所に腰を下ろすと続くようにフィーも隣へストンっと座った。
 横から見ると本当に見違えるように成長したと思う。これだけ綺麗になったのなら男も放っておかないんじゃないか。まぁ、無闇に手を出した輩は絶対に許さんけど。ボンは別にフィーに不埒なことはしてないらしいが夜遅くまで付き合わせたのだから結局は悪い男だと認定してる。ぎりぎり冗談の範囲で、だが。
 視線に気付いたフィーはちらりとこちらを見た後、思考を巡らせているのかやや俯き目の先を宙へ移した。
「ゼノに聞きたいことがあったんだ、ずっと。正しくは………もう一度って感じだけど」
「聞きたいこと? オレに? んー…団長関係のことならもう話すことなんて何もあらへんけど」
 龍霊窟での戦いの前に思いの丈…と言っていいものなのかはともかく。散々ぶち撒けたし、団長を不死者として蘇らせる経緯も話した。他に問い掛けたいほどの疑問なんて残っていたかなぁ。
 フィーの瞳が揺れている。どうやら聞くのに勇気がいるらしい。オレ相手にそんな畏まらなくても、と軽口叩くような瞬間じゃあない。オレだってフィーに言えないようなことが過去にあったんだから。
「覚えてるかわからないけど…前、私が特訓の話を持ちかけた時にどう感じたかって聞いた。でもあの時、ゼノははぐらかして結局ちゃんと答えてくれなかった」
「……。そうやったなぁ」
 我ながらせめてもの肯定、だったと思う。フィーはオレがあっさり認めるとは思っていなかったようで少しだけ驚いた顔をしていたけどすぐにさっきと同じ瞳に戻っていた。
「私はもう一度聞く。ゼノはあの時、どう感じてた? どう思った? 私はあの時心も体も未熟で何もわからなかった。でも、今は……ゼノからしたら微々たるものかもしれないけど確かに変わった。だから、ちゃんと知って前に進んでいきたい」
「…………」
 僅かな可能性が脳裏に過るのは確信的だと踏んだから。ああ、だからレオの奴はオレとフィーを二人にさせたんだと理解してしまった。
 相棒は憎いことをする。そういう不器用な優しさも含めて実に奴らしくて笑いそうになってしまう。同時に、己の内を今から吐露をするのが少し小っ恥ずかしくもなってしまった。
 あの時と今では確実にすべてが異なっている以上、向き合って応えるのが筋なんだろうな。
「……正直嫌だった、なぁ」
「……ゼノ…」
「あんなところでありがとうって言われたくなったし、姫の手が汚れるって考えるだけで鳥肌が立ったわ。でもオレが止めたらそれは単なるエゴ…フィーのことなんてなんも考えてないって認めることになる。だからまぁ、あん時嘯いたってことやな」
 いくら頑なに閉じていても一度開いてしまえばあっと言う間だと痛感する。我ながらなんと面倒くさい性格なことなのか。いや、それはもうフィーには知り尽くされているから今更嫌われ様はないだろうけど。
 瞳はもう揺れていない。真っ直ぐ、透き通った眼差しをオレに向けて屈託のない笑顔を浮かべながらフィーは「ありがとう」と返した。
 何がありがとうなんだか。思ったことをそのまま伝えただけなのに。聞かれた側はむしろ困惑するものじゃないのだろうか。全く、姫のありがとうとやらには悩まされる。
 細やかな反撃として謝罪の言葉を掛けられるよりは多少可愛げがあるなぁ、と呟けば「褒めてるのか貶してるのかわかりにくい」なんて言われてしまった。


***


「フィー」
 入り口の方へ視線を向けるとリィン達の姿を認めて、ベンチから立ち上がると隣から声を掛けられた。
「ちゃんと帰ってこんと承知せんからな」
 私に続くかたちで立ったゼノが不意に手を伸ばして頭を優しく撫でてくる。この撫でられる感覚はリィンのそれに近いものを感じるような――そう逡巡していればゼノは噴水広場を抜けて北へ続く道へ歩いていってしまう。
 途中、私の視線に気付いていたのか振り返らずともひらひらと手を振るうのが見えて「ゼノもレオも帰ってこないと承知しないから!」と大声で返した。
 私の声で周りの人を驚かせてしまったのは申し訳ないけれど、軽い足取りでリィン達の待つ入り口へ駆ける。
 表情は見えなかったけど、きっとゼノは笑っていたんじゃないかって思う。
 戦いが終わったらもう一度、あの感覚を確かめなくちゃいけないのだから。
 足が軽い。明日へ続く為の険しい道もきっと、成し遂げられるくらいには。


end

 


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