ジェイド国
エメロード姫の探索が思いの外難航したため、私たちは昼食を食いっぱぐれたまま次の世界に行くことになった。そこでたどり着いた世界は、羽根の力やそれに似た強い力も感じ取れないということで、別に立ち寄らず次の世界に行ってもよかったのだがーー
盛大な腹の虫があちこちから鳴り響いたため「モコナがおごったげる!」という言葉を鵜呑みにしていない一行はそれでも眼前の寿司屋に入店した。
「ジェイド国の料理は質素なものが多かったですもんね」
私もそこまで空腹だった訳ではないが、酢飯の香りに包まれながらつやつやと輝く魚を眺めていると遅れてお腹が鳴った。回らない寿司屋に来たのは初めてで、ふんふんと鼻息荒く待っていると、特上寿司が十一貫と丁寧に盛られたガリの乗る板が置かれた。
「さ!みんな食べてっ♡」
無論、美味しいに決まっている。やはり黒鋼は寿司を食べたことがあり、いつもより上機嫌に「ん、んまい」と感想まで述べている。
サクラは初めての寿司が気に入ったようでニコニコと食べ進めているし、小狼も酢飯と生魚に経験があるようでためらいなく次々咀嚼している。その口はもにゃもにゃと何かを懸念しているように喋っているが、生魚と酸味が苦手らしくじめじめとしたファイを含め誰も聞いていない。
ファイは一行がおかわり分まで食べ終えたところでようやく攻略を終えた様子で、あれこれ味にコメントはしていたがモコナへの礼は忘れず伝えている。店主の眼前でよくあれだけ渋い顔ができたものだ。身支度をしながらサクラと共に寿司への感想を店主に絶賛しておく。
「この国のお金持ってないんですけど……」
「みんなっ!早くモコナのお口に飛び込んで!!」
ガバっと口を開けたモコナに驚愕しつつも、私は店主の手を握り手早く回復魔法を掛け慌てて離れる。お金は払えなくても、せめて腰痛などあれば、楽になるといいのだがーー
寿司パワーで機嫌のいい黒鋼の外套を掴み、どうにか次元移動には乗り遅れずに済んだ。
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