「なぁ、あんたを助けに来たんだよ」
「よけいなおせわ」
「生意気なお兄さんだな」
「ふん」
「さぁ、これからどうするか」

そう呟くと新海の手に握られていたのは、女の手だった。何でもない女の手だった。切断面から血がダラダラと流れていて、床に血が広がっていた。
周は切られた女の人を見て、どうともしなかった。むしろ、満足げそうに見えた。

「そうだなぁ。2人でどこかに遠くに逃げるか」
「やだ」
「じゃあ、ここで死ぬ?なぁ、圭斗」
「うん。ころして。いきたってしかたないもの」
「……あんたは生きる楽しみをこれから知るべきだ」
「……だって、ボクひとり……母さんも父さんもしんだ」
「オレがいるだろ」
「……ばか」

周は親の亡骸を見つめて、何をすることなく新海の手を握りしめていた。新海は小さくて無力な子供を守るように強く握り返した。反対側の手には真っ赤な包丁を握りしめながら。

∴無力な殺人鬼