「…………ギャリー……」 ギャリーがメアリーが持っているイヴの赤い薔薇を返してもらう代わりに青い薔薇をメアリーに上げてしまった。ギャリーは大丈夫と言った。自分の身が危機的状況に陥っていると言うのに、イブを不安させないように激励した。私は本当はスゴくスゴく怖かった。ギャリーが死ぬことを感じていたから。 メアリーを追いかけるたびにギャリーの大事な大事な青い薔薇の花びらが落ちていた。ギャリーはこれを見て、何を思ったろうか。自分の死が近いことを分かっているかように、ありえないほどに無表情だった。泣き叫ぶでもなく、怯えるでもなく、イヴの前でそれなりの行動を見せなかった。 私がいるからギャリーは耐えているのだ。死の恐怖に怯えながらも、私の前では必ず、そういった行動を見せない。それが苦しかった。泣き叫んで欲しかった。怯えて欲しかった。そうすれば、私も泣けたはずだから。 イヴもギャリーの前では泣けなかった。怖がれなかった。子供ながら、大人をもっと不安させたくなかった。 そして、別れの転機が訪れてしまった。 青い薔薇の花びらがまた、落ちていた。今すぐにメアリーに追いつかないと焦燥感が駆り立てていた時、とうとうギャリーは痛みに耐えられず、倒れてしまう。 (あ………) 大丈夫だから、とか、嘘を付きたくない、とか、本当も言いたくない、とか、ギャリーの目は揺れていた。 (どうしよう) (ギャリーが、ギャリーが……) 泣けない。泣き叫ぶはずがなかった。 今までずっと一緒にいてくれた人が今にも死にかがっているのに、私はただただ言葉を口にせず、こんがらがった ギャリーが泣いていないから、私も泣けなかった。この人は本当に最後まで……と何も考えられず、メアリーを追いかけた。 |