俺と桑門の出会いは後輩探しのきっかけで起こった。
桑門の部活でその後輩が入っていた。だから、美術室に寄ったのが俺の恋の始まりだった。

今日も美術室に寄る。
毎日ではなく、週に1、2くらいだ。そんなに頻繁に来るといろいろと迷惑をかけるし、補習のせいで来れないこともある。それに他に美術室に寄る生徒が多いからだ。天才の桑門の作品をこっそり見たい人が大半だった。
藤城学園はずば抜けた人が特に多いが、その中に入ってるのが芸術の天才の桑門だ。実際、芸術に疎い俺は桑門の作品に目を奪われるばかりだ。
静かに美術室に入ると、桑門がいた。何やらキャンパスに絵の具を一心不乱に塗っていた。
ゆっくり近付くとキャンパスの中身をのぞき込む。
一瞬言葉を失った。
言葉で表現し難い絵を桑門が描いているのだから、感想はどういえばいいのか分からなかった。強いていうなら、心がとても揺さぶられたような。
こんなに近くにいても桑門は一心不乱に色付いた液体をキャンパスに描き殴るように力強く丁寧に塗っていった。
俺はじっと桑門を見守る。
桑門の絵を描く姿勢がしっかりしていて好きだ。
芸術に命をかける桑門の目が好きだ。
俺は今、別次元の世界にいる。桑門の作り出す世界の一部として。

桑門が俺に気づくまで、俺はずっと桑門の横顔の、一生懸命な睫毛の長い瞳を見つめた。

∴睫毛の長い横顔ばかりを覚えている
title/深爪